2021年6月6日日曜日

[積読立読斜読] 『くらしのための料理学』(土井善晴著、NHK出版、2021年)


 NHK出版 学びのきほん

『くらしのための料理学』(土井善晴著、NHK出版、2021年)


テレビ番組のテキストのような簡易製本ですが、内容は非常に濃く、日本料理を通じてみた日本民俗学であり、情報過多の現代日本においての家庭料理の復権をめざしつつ、日本の基本の家庭料理「一汁一菜」が環境問題をも救うという壮大は啓蒙書です。



<内容紹介>

その道40年、集大成にして入門の書。

私たちの一番身近にある「料理」。生きていくうえで欠かせないからこそ、毎日の食事を作ることにプレッシャーや負担を感じてしまう。しかし、料理の「そもそも」を知り、暮らしの意義と構造を知ることができれば、要領よく、力を抜いて「ちゃんとできる」ようになる。日本人は料理を、どのように捉えてきたのか。古来より受け継がれてきた美意識や自然観、西洋との比較などを通して私たちと料理との関係性をひもとく。料理を通して見えてくる「持続可能なしあわせ」「心地よく生きていくための道筋」とは何か。NHK「きょうの料理」でもおなじみの著者が、いまの日本の料理のあり方を考え抜いた末に提示する、料理と暮らしの新しいきほん。


<著者紹介>

土井 善晴 著

料理研究家。1957年、日本の家庭料理の第一人者であった料理研究家・土井勝氏の次男として大阪に生まれる。スイス、フランスでフランス料理を学び、帰国後は老舗の料理店・大阪「味吉兆」で日本料理を修業。1992年に「おいしいもの研究所」を設立。以降、日本の伝統生活文化を現代に生かす術を提案。1988年~「おかずのクッキング」(テレビ朝日系)、1987年~「きょうの料理」(Eテレ)レギュラー講師。著書に『土井善晴の素材のレシピ』(テレビ朝日)『一汁一菜という提案』(グラフィック社)『土井善晴の懐かしごはん』(NHK出版)など多数。



<読書メモ>

P6

食文化が自分や家族の命を守り、幸福につながるという、料理の本来の意味や意義を強く思うようになっていました。


P8

今、料理を考えることは、自然と人間を考ええることだと思っています。本書では、料理を通じて、持続可能な家族のしあわせ、この地球を心地よく生きていくための道筋をみなさんとともに考えていきたいと思います。


P17図

私たちが接する食の情報には、このように多様な観念があり、それらが料理を捉えにくくしています。



P18

料理の「そもそも」を知り、暮らしの意義と構造を知ることで、要領よく、力を抜いて「ちゃんとできる」ところまでを目標としたいのです。料理は知る(知識)だけでなく、おこなう(行動)ことが大切だからです。


P29

今、フランスには、高度な料理法を用いた「経済と関わる芸術的な料理」と、その父の自然の産物をマルシェに集め、その恵みを享受しつつ命を育む「暮らしの料理」という2つの世界観があります。(中略)日本に大きな影響をもたらしたのは、経済を中心に据えたものです。


P32

「ケは死者の弔いの日」、「ハレは神の日」です。それは日本土着の信仰にもつながるものだと思います。そしてその間に「日常のケハレ」として、生きる人間の「喜び」「悲しみ」「希望」があって、繰り返されます。


P33

この「ハレ・日常のケハレ・ケ」という分類は、食材の旬を3つに分けて、「はしりもの」「さかりもの」「なごりもの」とするような、命の誕生から死に至るまでの時の移ろいを、区別して味わうことになります。


P37

お供えとは「備え」、未来に安心をつなげることです。

P46

西洋の栄養学(一汁三菜)と和食文化(一汁一菜)には整合性がありません。


P62

西洋の「進化」(混ぜる)と和食の「深化」(和える)


西洋料理では、液体、粉類、卵などを「混ぜる」ことで、まったく違うものを作り出そうとします。(中略)和食の徳量は「和える」ことです。(中略)食材にあまり手を加えません。


P94

「人間は料理することで人間になった」リチャード・ランガム教授(ハーバード大学)

『火の賜物』