家族の周辺に社会現象とまでなっているスマートフォン対応ゲーム「ポケモンgo」を実際にゲームしている人がいないので、さっぱりわかりません。まとめてみました。
個人的な興味は下記のとおりです。
(1)概要(そもそもよくわからない)
(2)ビジネスモデル(どうやって儲かるのか)
(3)社会現象の問題点(何か問題があるのか)
ネットやら週刊誌やら新聞から集めてみました。
(1)概要(そもそもよくわからない)
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http://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/2016_0812.html
NHK NEWS WEB
ポケモンGO その波及効果は(2016年8月12日 15時15分)
7月22日の配信開始から3週間がたつポケモンGO。歩きスマホなどが問題となっていますが、東日本大震災や熊本地震で被災した4つの県が8月10日、このゲームアプリを活用して被災地に観光客を呼び込む取り組みを発表するなど、観光やビジネスへの効果も期待されています。この3週間で何が起きたのかをまとめました。
(経済部 野上大輔)
■業績アップへ期待広がる
ポケモンGOは7月6日にアメリカやオーストラリアで配信が始まり、8月10日現在、54の国と地域に広がっています。ポケモンというキャラクターを生み出し、世界的なコンテンツに育てたのは、大手ゲーム機メーカーの任天堂です。これだけの世界的なヒットなので、さぞ任天堂ももうかっているのではないかと思いきや、今のビジネスモデルでは業績への影響は限定的です。
ゲームアプリを開発したのは、アメリカのベンチャー企業のナイアンティックと、任天堂が32%を出資しているキャラクター管理会社の株式会社ポケモンです。ゲームの配信と運営を一手に担っているのはナイアンティック。任天堂がアプリで得られる収益は、株式会社ポケモンから受け取るものに限られます。日本で配信が始まった翌週(7月27日)に発表した決算で任天堂は、ことし4月の段階で示した今年度の最終的な利益の予想を据え置きました。
一方、来店客の増加を通じて業績アップを狙う企業もあります。ゲームの最大の特徴は、位置を把握するスマートフォンのGPS機能とAR=拡張現実の技術を組み合わせていることで、スマホを持って特定の場所に行くと現実の風景の中にポケットモンスターが現れます。位置情報の機能を使って、各地の観光地や名所などがポケストップと呼ばれるアイテム(ゲームを有利に進めるための道具)を入手できる拠点にあらかじめ設定されています。
この機能をビジネスに生かしているのが、日本マクドナルドです。国内のおよそ2900店舗がゲーム上の地図に表示され、ポケストップやキャラクターどうしを戦わせるジムと呼ばれる場所に指定されています。日本マクドナルドによりますと、配信が始まった7月の店舗の売上高は、前の年の同じ時期と比べて26.6%増え、客足も伸びたということです。
大手映画配給会社の東宝も映画館への来訪を促そうと、全国のTOHOシネマズの映画館をポケストップに指定することを8月9日に発表しました。企業との連携は、関連する広告費を得られるという意味で、ゲーム会社の新しいビジネスモデルとも言えます。
■被災地復興へ観光客誘致を狙う
ゲームを観光に生かそうという取り組みも始まっています。8月10日、宮城県の村井知事と岩手県の達増知事、それに福島県と熊本県の担当者がナイアンティック(日本法人)と都内で記者会見しました。今後は、この4つの県について、ポケストップやジムを追加したり、被災した地域でイベントを開催したりして、観光客の誘致に取り組むとしています。
会見で宮城県の村井知事は、「実際に人が動くゲームの特性を利用した誘客や被災地の住民と訪れる人との交流の促進が期待できる。訪れた人には被災地の復興状況についても見てほしい」と述べて、期待感を示しました。
■知らずに指定 除外求める動きも
ポケモンGOを活用したい企業や観光地がある一方で、知らないうちにポケストップやジムに指定された全国の公共施設などから、ゲーム目的に大勢の人が訪れたとして、対象から外すよう求める動きが配信開始の直後から相次ぎました。
このうち特に注目されたのが広島の平和公園です。ナイアンティックは要請があった場合、一定の条件を満たせば対象から削除すると説明していました。原爆投下から71年となる広島原爆の日の8月6日。広島市によりますと、午前2時前に「ポケモンが出現しないよう設定するとともにポケストップなどをすべて削除した」という内容のメールが寄せられたということです。
広島市の担当者は「平和公園が慰霊と平和を祈る『聖地』であるということを開発会社が理解し、速やかに対応していただいたのだと思っている」とコメントしました。
ポケストップをめぐっては、8月8日の閣議で各省庁の判断で削除要請などを行っているとした答弁書を決定するなど、政府も対応に追われています。政府によりますと、8月1日の時点で、海上保安庁が管理する施設の敷地内に2か所、経済産業省の本省庁舎の敷地内に1か所、国土地理院の本院庁舎の敷地内に4か所、総務省や警察庁などが入る中央合同庁舎第2号館の敷地内に1か所、内閣官房が管理する施設の敷地内に1か所の合わせて9か所にポケストップが存在するとういうことです。
■位置情報ゲーム 開発に拍車か
アプリ市場のデータ分析を行うアメリカのアップ・アニーによりますと、7月31日の時点で、世界のダウンロード数は1億件を超えました。今後については「各国の配信も相次ぎ、スマートフォンの利用時間の全体を押し上げる強力なゲームということで、ダウンロードが増え続けることが予想される」としています。
ポケモンGOのような位置情報ゲームの可能性については、ライバル企業も注目しています。任天堂とゲームの共同開発を進めるディー・エヌ・エーの守安功社長は「基本となるシステムはこれまでと大きな違いはないが位置情報を活用してヒットした初めてのケースで新しい遊び方を提供した」と分析。
さらに、ゲームアプリの開発も手がけるLINEの舛田淳取締役は、「スマートフォンと位置を把握するGPS機能とキャラクターを組み合わせたゲームの形は、間違いなく今後の新たなトレンドになってくると思う。動向を注視して、われわれも取り組んでいきたい」と述べ、ゲーム開発が売り上げの3割ほどを占めるLINEとしても位置情報ゲームの開発への意欲をにじませました。
■開拓なるか 新ビジネスモデル
私自身、小学生のときに任天堂のゲームボーイで遊んだ「ポケモン世代」です。スマホのGPS機能、現実と仮想が一体となるAR=現実拡張、さらになじみのキャラクターを組み合わせたポケモンGOの社会現象が一過性のものなのか、それとも他社も追随するような新たなビジネスモデルの開拓となるのか。このゲームアプリが日本にもたらしたものを引き続き取材したいと思います。
(3)社会現象の問題点(何か問題があるのか)
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(耕論)ポケモンGOと社会 さやわかさん、古橋大地さん、湯淺墾道さん(2016年9月21日朝日新聞))
人気のスマートフォンゲーム「ポケモンGO」のサービス開始から22日で2カ月。狂騒もやや落ち着いたところで、このゲームの広がりから見えてくる今の社会とは。
■新技術がもたらした実験 さやわかさん(ライター、評論家)
ポケモンというキャラクターの世界的な人気を感じます。そして、みんな集めることがログイン前の続き好きなんだな、と。
いまのゲームは、パズル&ドラゴンズ(パズドラ)にしろ妖怪ウォッチにしろ、たいてい収集の要素がある。そのルーツがポケモンです。
1996年に出た初代ポケモンの開発者は「昔からある子どもの遊びをそのままゲームにすればいい」と考えたそうです。昆虫採集やメンコのおもしろさは、「集める、育てる、見せ合う、交換する、戦わせる」。この万国共通で世代を超えた楽しみが、ポケモンの骨組みです。
息の長いヒットになり、さまざまな派生作品が出ました。歩くゲームもありました。総決算がポケモンGOだと言えます。
そこにAR(拡張現実)の技術が新しい魅力を加えています。目の前の原っぱや名所が、スマートフォンを通して見ると、ポケモンの出現場所になる。ネットのデータという架空の薄皮をかぶせることによって、現実とは別の文脈が生まれるおもしろさです。
ゲーム史を振り返ると、部屋で独り楽しむのが主流だったのは、初代ポケモンが現れる90年代半ばまでです。ポケモンGOは、もはや外に出て行くしかない。現実から離れたバーチャルで満たされるどころか、現実とがっちり組み合っています。現実をどうゲームに変えるかという、ここ最近業界が取り組んできた進化の最新形です。
大ヒットで、現実から反発も起こりました。ずっとスマホを眺めてウロウロするなとか、宗教施設で遊ぶなとか。
すでにスマホが普及し、いま身の回りにあるものに関する情報を調べやすくなっています。それがAR技術で、さらに即時的で分かりやすい端末ができるでしょう。あの建物は何? あの人のシャツのブランドは? 将来、そんな情報を、たとえば眼鏡型の端末でチェックしながら闊歩(かっぽ)する人があふれるようになるはずです。そのとき、危ない、不審だというだけで禁止するわけにはいかないでしょう。
えてして新しいテクノロジーは、現実に対する見方の死角を突きます。ARがもたらす世界にどう対応するのか。ゲームの形で予告編的にやってきたのがポケモンGOで、いまは社会実験だと考えることが建設的です。
一方で、ネットの文脈を無理やり現実に与えることの暴力も当然あります。ユーザーには、悪いことをもたらす可能性があると認識して、倫理的に振る舞うことが求められます。技術には害がないと言い募るばかりでは、議論は平行線になってしまいます。
最近のゲームは、出た後にさまざまな仕掛けがあって、1年、2年と遊べます。ポケモンGOも始まったばかりです。(聞き手・村上研志)
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74年生まれ。著書に「僕たちのゲーム史」「一〇年代文化論」「キャラの思考法」など。
■人を動かし、つながり生む 古橋大地さん(青山学院大学教授)
ポケモンGOのもとになった位置情報ゲーム「イングレス」を、昨年から大学の講義に取り入れています。ポケモンGOと同じく、全地球測位システム(GPS)を使って街の公共施設などに設定された陣地を巡り歩き、争奪するゲームです。
講義では、地図と位置情報を利用したこのゲームの仕組みを、「人を動かす」「街を理解する」という観点で捉え、社会の問題の解決に活用できないか、学生たちと考えています。今年は夏休み前に日本でポケモンGOのサービスが始まったので、「ポケモンGOで社会問題を解決する」を講義の最終課題テーマにしました。
イングレスやポケモンGOを運営する会社「ナイアンティック」は、元々はグーグルマップやグーグルアースなどの地図情報サービスを手がけていたメンバーが主体です。
地図などの空間情報は、地域の多様な情報を集約する基盤となるものです。都市計画や環境影響評価などで、面的に地域を理解する上で欠かせません。私自身も、そのようなコンサルティングを手がけてきました。アマゾン熱帯雨林の衛星画像を元に作製した地図情報が、違法森林伐採の取り締まりに活用されたこともあります。
加えて、大規模な自然災害でも威力を発揮します。東日本大震災ではボランティアのメンバーとともに、発生から4時間足らずで、被災情報などを地図上に集約するサイト「震災インフォ」を立ち上げました。ネット上の地図を基盤とすることで、避難所の場所などの情報を広く共有することができるのです。
そのような可能性に加えて、スマホの位置情報ゲームの特徴は、やはり実際に人を動かす、という点です。
震災を機に20~30代の女性中心に結成され、私も理事を務める団体「防災ガール」は、イングレスを使って災害時の避難場所を巡る避難訓練を実践しています。岩手、宮城、福島、熊本の地震被災4県などは、ポケモンGOを活用した観光客誘致に取り組み始めました。
人が動き、実際に顔を合わせることで、人と人とのつながりが生まれます。
私も自宅の近所で、子どもと一緒にポケモンGOをしていて、「ポケモン、見つかりましたか」と知らない人から声をかけられたことがあります。「こんなポケモンが出るんですよ」と会話が始まる。
そんな会話から、地域の様子や課題が見えてくるかも知れません。
ただ、それが一度限りで終わってはもったいない。ゲームをきっかけにした人や地域のつながりを、どうやって継続的なものにし、課題の解決につなげるのか。そんなシナリオづくりも必要になるでしょう。(聞き手・平和博)
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ふるはしたいち 75年生まれ。NPO「クライシスマッパーズ・ジャパン」理事長。共著に「位置情報ビッグデータ」など。
■個人情報、捉え直す機会に 湯淺墾道さん(情報セキュリティ大学院大学教授)
「ポケモンGO」はGPSによる位置情報を使って遊ぶゲームです。
ただ、位置情報から何がわかり、悪用されたらどんな被害が起きるのか、十分理解されているとは言えません。
GPSの位置情報は誤差数メートルという精度があります。継続的に位置情報を収集することで、その人の暮らしぶりも明らかになってしまいます。
3年前、JR東日本のICカード「スイカ」の、乗降履歴データが販売され、プライバシーへの不安から大きな問題になりました。
これは乗った駅と降りた駅の“点”の情報ですが、ポケモンGOの場合は、まさにプレー中の移動履歴がすべて収集されています。
例えば移動履歴の中に特定の専門病院があれば、医療情報という機微に触れる情報とひも付く可能性があります。
日常生活の動線が把握されてしまえば、子どもが誘拐、ストーカーの危険にさらされるかも知れません。
もちろん、移動履歴は実名とは結びついてはいないし、運営会社の「ナイアンティック」は、今のところ、スイカのように外部販売するとも言っていません。
ただ、実名と結びついたり、流出したりする恐れもないわけではない。ゲームで使うプレーヤー名を、不用意に実名が推測できるものにしてしまえば、その恐れは高まります。本物そっくりの不正アプリが出回って、スマホのプライバシー情報を抜き出す危険もあります。
プライバシーだけではなく、デジタルの世界と現実が重なり合うことで、起きてくる犯罪もあります。
米国では、ポケモンの出現頻度が上がる「ルアーモジュール」というアイテムを使って、被害者をおびき寄せる強盗事件も起きています。ニューヨーク州知事は、子どもたちの保護を目的に、性犯罪で保釈中の人々を対象として、ポケモンGOの利用を禁止しました。
ただ、プライバシーに関わる情報は、その状況によっても、捉え方が変わることがあります。自動車での個別の移動履歴は、プライバシー情報と言えるでしょう。だが、東日本大震災や熊本地震では、通信機能のあるカーナビの移動履歴をまとめて、「通行実績マップ」として公開し、被災状況の共有に役立ちました。
まして、新しい技術が広がると、それまでのプライバシーや安全の基準の「相場観」を改めて捉え直す必要も出てきます。今後は、インターネットにつながった家電の普及などで、生活のあらゆる場面で、プライバシーに関わるデータが収集されていきます。その利用を、どこまで納得できるのか。
ポケモンGOが、そんな議論のきっかけになればと思います。(聞き手・平和博)
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ゆあさはるみち 70年生まれ。九州国際大学教授・副学長を経て現職。著書に「電子化社会の政治と制度」など。
(2)ビジネスモデル(どうやって儲かるのか)
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ポケモンGO、誰がどうやっていくら儲けているのか
プレイヤーは1億人、経済効果は10兆円!?(週刊現代講談社)
若者から高齢者までが熱中。外で遊ぶゲームなので、世界各国でユーザーが街にあふれる。この世界的人気ゲームを「ビジネス視点」で深掘りしてみたら、知られざる驚愕の収益モデルが見えてきた。
■無料でも儲かる
「まず言えるのは、ポケモンGOは従来のスマホゲームのビジネスモデルとは一線を画している」
スマホ評論家の新田ヒカル氏が言う。
「従来のスマホゲームは、基本的には高額課金のビジネスモデル。ゲーム内で使う希少アイテムの入手には、『ガチャ』と呼ばれる有料のくじ引きをやる必要があり、熱心なユーザーほど当たるまで何回もくじ引きにカネをつぎ込むことになっていた。
くじ引きの当たりの確率はゲーム会社が決められ、一部のヘビーユーザーは何十万円、何百万円と莫大な額を支払うことになる。こうしたユーザーの『中毒性』を利用したビジネスモデルは、消費者庁が『射幸心をあおっている』などと問題視してきた」
一方で、ポケモンGOは、基本的にはタダで遊べる。ゲーム内で使える一部アイテムは課金制だが、すべて定額である。
「要は、多額を費やさなくても老若男女が夢中で遊べる。そのため、全世界に爆発的に広がったわけです。従来のゲームは、課金アイテムに多額を投じる一部ユーザー内のブームにしかなり得なかった」(前出・新田氏)
しかし、それでどうやって儲けるのか?ユーザーは世界で1億人とも言われるが、それでもあまり儲からないのでは?
もちろん、すぐにそんな疑問が浮かぶだろう。
先に種明かしをすれば、答えは「NO」。むしろ、ポケモンGOは従来のスマホゲーム以上に莫大な儲けを稼ぎ出すまったく新しいビジネスモデルになる可能性が高い。
経営コンサルタントの鈴木貴博氏は、「企業から巨額の『広告料』を得られるのが大きい」と言う。
「ポケモンGOの凄みはユーザーを特定の場所に誘引できる『広告機能』を持ち合わせていることで、これがおカネを生む。
具体的に説明すると、ゲーム内では『ポケストップ』と呼ばれる、ポケモンを捕まえるためのアイテムをゲットする場所があります。ユーザーはゲームを進める中で、このポケストップに立ち寄る必要がある。おのずとそこには、ユーザーが大挙して押し寄せます」
ワイドショーでは、公園、レストランなどにゲームに興じる人が大量に集まる異様な様子が映し出されているが、あれがポケストップの風景。タレントの峰竜太氏の自宅がポケストップになっていたと話題にもなった。
そのポケストップの場所をどこに指定するかは、ゲーム制作会社のさじ加減ひとつで決められる。言い方を換えれば、ポケストップになれば集客できるとして、企業から「広告費」を取るビジネスが成立するわけだ。
カドカワ取締役でファミ通グループ代表の浜村弘一氏も言う。
「スマホゲームはこれまでは『BtoC』、つまりは企業が消費者から収益を得るモデルでしたが、ポケモンGOは『BtoB』で企業が企業から収益を得られるのが画期的です。人を動かすインフラとして、ポケモンGOを利用したいと考える企業は続出するでしょう」
■予想売上高「5兆円」とも
実際、すでに日本マクドナルドHDは契約を締結。全約2900店舗がポケストップなどになり、さっそく莫大な経済効果が見込まれている。
「ポケモンGOの国内ユーザーが1000万人として、100人に1人がマクドナルドに行けば10万人。1人当たりの客単価が300円とすれば、一日に3000万円、年間約110億円という巨額の増収効果になります」(前出・新田氏)
何億円もかけてテレビCMを流しても、果たして集客効果があるのかどうか不透明だが、ポケモンGOは直接的に人を誘導できるのが強み。100億円以上の増収効果があるのなら、数十億円を払ってでも提携したほうが得だと考えるのが「経営の常識」である。
「今後は、『食べログ』などに広告を出していた外食系がポケモンGOへの移行を考えるでしょう。ネット広告の市場規模約1兆円のパイを大きく喰っていくのです。
さらに、提携企業は倍々ゲームで増えていく可能性が大きい。たとえば、イオンが『週末の特売日に来店すれば、レアなポケモンが登場する』との提携戦略を打ち出せば、イトーヨーカ堂も追随せざるを得ない。同じことはJALとANAの間で起こり得るし、そうなればJRも黙ってはいられない」(前出・鈴木氏)
ITジャーナリストの三上洋氏は、「自治体からの提携依頼が増えるでしょう」とも言う。
「たとえば自治体が観光ルートに沿って、アイテムを入手できるポケストップを大量申請する。そこがポケモンの『聖地』と認知されれば、旅行客を誘引する効果が期待できる。訪日する人が増える効果も期待できます」
ポケモンGOの「誘致合戦」が各地で行われ、全世界の企業や自治体から億円単位の広告収入がジャブジャブと入ってくる——。これがすべて「儲け」となるわけだ。
世界の広告市場は50兆円規模なので、その1割でも5兆円の売り上げが見込めるが、実はポケモンGOのビジネスモデルはそこにとどまらない。さらに多くの儲けを稼ぐ「仕掛け」も準備されている。スマホジャーナリストの石川温氏は言う。
「どういう人がどういう街を歩いてゲームをしているか。今後はそうしたビッグデータがどんどん溜まっていくので、このデータを使った新規ビジネスができる。商業施設などを運営する企業へのマーケティング支援や、販促イベントをやりたい企業へのコンサルティング事業もやるでしょう」
つまりは、ゲーム以外のビジネス領域にまで事業が広がっていくわけだ。京都大学客員准教授の瀧本哲史氏も言う。
「これからは、LINEなどの機能もポケモンGOの中で実現できる。メールやメッセージをポケモンが届けたりするわけです。ポケモンGOは人の流れを変えられるので、極端なことを言えば、どこを流行る街にして、どこを流行らない街にするかも決定できる。そうした機能を利用した新しい不動産業も可能です」
では、こうして得られることになる莫大な利益はだれの懐に入るのか。
「今期の課金売上高を1000億~1300億円と仮定すれば、まずその3割はグーグルとアップルに決済手数料として入ります。残りをポケモンGOを開発した米ナイアンティックと株式会社ポケモンの2社で分け合う。
任天堂はポケモンの利益のうち出資分の32%を収益計上する形で、それは金額にして今期60億~80億円ほどになる」
楽天証券経済研究所の今中能夫アナリストはそう試算した上で、「任天堂は別途、関連商品でも儲けられる」と言う。
「任天堂はすでに『ポケモンGOプラス』という機器を発売予定。今後ユーザー数が2億人に膨れ上がり、そのうち2割が購入すれば、約200億円の営業利益になる」
今期の年間予想利益が450億円なので、その半分を稼ぎ出すほどの巨額だ。ITジャーナリストの本田雅一氏も言う。
「任天堂はポケモンをミッキーマウスのようにして、ディズニー型ビジネスも展開できます。ポケモンが世界中で認知されたことで、今後はポケモンのテーマパーク、ホテル運営、映画事業など、億単位のビジネスを次々に展開できるわけです」
ちなみに、ポケモンGOのユーザーは街を歩き回るので、「周辺消費」も盛り上がる。
「ゲームを長時間やるためにスマホの携帯用バッテリーを買い、外を歩き回るためスニーカーを新調し、ゲーム途中でレストランに入って外食をする。ポケモンGOのために外出する人が500万人いて、彼らが一日2000円を出費すれば、一日100億円の経済効果になる」(前出・三上氏)
もしポケモンGOが飽きられる日が来たら、すべてゼロになるかといえば、そんなこともない。
ファイブスター投信投資顧問取締役運用部長の大木昌光氏は、「ポケモンGOの類似ゲームとして、ガンダム版、キティちゃん版などが出てくれば、それがまたポケモンGOと同じような経済効果を生む」と言う。
経済アナリストの森永卓郎氏も、「長期的な経済効果は、10兆円では済まない。政府の経済対策並みの効果で、その恩恵は回り回ってわれわれの賃金に反映される」と言う。
ポケモノミクスが生む「好循環」は、日本経済を大復活させる起爆剤になるかもしれない。
「週刊現代」2016年8月13日号より
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