『家賃滞納という貧困』(太田垣章子(あやこ)著、ポプラ新書、2019年)
去る6月9日(日)に広島ガス主催の賃貸物件セミナーがあり、講師が司法書士の太田垣章子さんでした。不動産オーナー向けのセミナーで演目は「2200人の大家を救った司法書士に聞く 賃貸トラブルはこう解決する」というものでした。
当方は法律の知識がまったくないものですから、簡裁訴訟代理関係業務の規定が創設(平成14年司法書士法改正)されて、140万円を超えない請求事件は弁護士ではなくても、司法書士が裁判の代理業務をできるようになったことは知りませんでした。
太田垣さんはこの制度による家賃滞納トラブルの第一人者で「2200人の大家を救った」というのは実際の取り扱って解決までに至った件数だそうです。
講演の内容も実例を盛り込んだ大変意義のあるものでした。太田垣さんのプロフィールを調べたところ、波乱の人生で決して順風満帆の司法書士さんではありません。
名家のお嬢さんと生まれ病院経営者と結婚して一児を設けたものの離婚。シングルマザーとして働きながら司法書士の資格を5回目の試験で取得。不動産会社への飛び込み営業で出会った仕事が「家賃滞納トラブル」解決で、徹底した現場主義で大家さん側だけでなく滞納者にも寄り添った手法で業績を上げ、独立して今日に至る。。。という経歴です。
太田垣さんの著作は大家さん側からの『賃貸トラブルを防ぐ・解決する 安心ガイド』(日本実業出版社、2017年)がありますが、本書はそのコインの裏側、家賃滞納者の実例集です。
出版社サイトより内容紹介です。
(1)家賃は、スマホ、電気・ガスの支払いや借金の返済に比べると、
優先順位が低くなりがちなため、一度家賃滞納をしてしまうと引き返せない貧困への第一歩となってしまう。
(2)家賃滞納の現場には、
貧困に陥らないための教訓も隠されている。
(生活費のうちの家賃の比重が高すぎはしないかという検討)。
(3)保証人の7割を占める家賃保証会社は、
監督官庁がなく、その実態どころか企業数すらわからず、闇も多い。
(親子兄弟間の関係が希薄になり保証人をたてられない、立てるのもわずらわしい)。
本書では18の家賃滞納実例から見えてくる、現代日本の問題点を見事にあぶりだしています。大家さん側からの賃貸トラブルを超えて、滞納者側からの視点で著作をまとめたポプラ新書の編集者の慧眼をほめるべきかもしれません。
太田垣さんによると本書の印税は全額シングルマザー支援団体に寄付されるそうです。太田垣さんの著作を購入して、間接的に支援・応援したくなりました。(今回はキンドル版を購入)。