"The Basement Tapes"(1975)
ボブ・ディランさんは偉大すぎて他に語る方も多いと思われます。当方はザ・バンドに限って本作品を聴くことが多いです。高校時代はマイナーすぎて当然買ってません。
録音は1967年6月から9月。一部の曲は1975年3月に録音。正規でのレコード発売を予定していなかったので先に海賊版が出回り後に正規版が発売されました。
1966年7月にオートバイ事故を起こして、ニューヨーク州のウッドストックで静養していたボブ・ディランのもとに、当時バックバンドをしていた、のちにザ・バンドとなるメンバーが集結し、ピンク色の外壁の大きな借家(ビッグ・ピンクと呼ばれた)の地下室で延々と繰り広げられたセッションまたは練習曲をテープレコーダーで録音したもの。正規版はトラディショナルな曲から新曲までの膨大な音源(100曲を超える)から24曲を収録。
そのうちの8曲がザ・バンド単独での演奏です。すべてがビッグ・ピンクの地下室で録音されたものでないのは確からしく、明らかなオーヴァーダビングもあるようですが、バンド名が決まってなかったボブ・ディランのバックバンドから、70年代のロック史を語るうえで欠かせないバンドに成長したザ・バンドのレコード・デビュー前の音源を聴くことができます。
印象的なジャケット写真はモダンジャズの名門ブルーノートのデザインの多くを手掛けたリード・マイルス。
バンドのオリジナル・メンバーをあらためて紹介します。
リヴォン・ヘルム (Levon Helm, 1940年5月26日 - 2012年4月19日)
ジェイミー・ロイヤル・"ロビー"・ロバートソン(Jaime Royal "Robbie" Robertson, OC、1943年7月5日- )
リック・ダンコ(Rick Danko、1942年12月29日 - 1999年12月10日)
リチャード・マニュエル(Richard Manuel、1943年4月3日 - 1986年3月4日)
ガース・ハドソン(GARTH HUDSON、1937年8月2日 - )
"The Basement Tapes"の録音当時、メンバー全員は20歳代ですが、1958年からアメリカのロカビリー歌手、ロニー・ホーキンスのバック・バンドとして、1965年からはボブ・ディランのバック・バンドとしてツアーに参加し、10年近いキャリアがありました。
8曲の音源を聴いてみると、すでにバンドとしてのまとまりは十分ですが、さらに高いレベルに到達するために、ディランの静養期間が同時にザ・バンドとしてのデビューへの最後の熟成期間となったようです。
8曲あるので、4曲ずつ2回に分けて紹介します。
Side 1-2."Orange Juice Blues (Blues for Breakfast)"
Richard Manuel
3:39
Side 1-4."Yazoo Street Scandal"
Robbie Robertson
3:29
Side 1-6."Katie's Been Gone" Manuel, Robertson
2:46
Side 2-2."Bessie Smith"
Rick Danko, Robertson
4:18
Side 1-2."Orange Juice Blues (Blues for Breakfast)" Richard Manuel 3:39
R&Bの軽快な曲です。サックスなどが1975年にオーバー・ダビングされたそうで、音源として完成しすぎの感じがして、デビュー前の「地下室」での録音からはほど遠い感じです。ザ・バンドが演奏する曲というより、前身のホークス時代を髣髴とさせる曲です。リチャード・マニュエルのボーカル、ダビングとはいえガース・ハドソンのサックスも魅力的です。
Side 1-4."Yazoo Street Scandal" Robbie Robertson 3:29
"Yazoo Street"はリヴォン・ヘルムの出身地アーカンサス州に実在する通りで、カナダ出身のロビー・ロバートソンがおそらくは想像上のアメリカ南部のざらっとした風合いの通りを歌にしたものと思われます。最初のボーカルはロビー・ロバートソンだったそうですが、曲調に合わず、リヴォン・ヘルムで再録音したそうです。
Side 1-6."Katie's Been Gone" Manuel, Robertson 2:46
イントロなしの出だしから歌唱・演奏ともザ・バンドの音です。途中の転調も効果的です。リチャード・マニュエルとロビー・ロバートソンの初期の競作曲だそうです。ザ・バンドとしての音の完成度は、想像ですがSide 1から録音の順番の月が下がっていった感じがします。
Side 2-2."Bessie Smith" Rick Danko, Robertson 4:18
女性ブルース歌手、ベッシー・スミスへの賛歌。最近ではノラ・ジョーンズが魅力的なカバーをしてます。この曲も歌唱・演奏ともザ・バンドとして完成の域ですね。
この"The Basement Tapes"とデビュー・アルバムの"Music from Big Pink"のバンドとしての完成度の違いはなんなのかが興味深いところです。これはまた後日考察します。
※曲目のデータは"List of Basement Tapes songs (1975)"(Wikipedia)を参照しました。