概していえば、
太宰治の作品で賞するに足りるのは
初期の短編に限られ、
戦後の諸作は多く少女愛玩の読物を出ない。
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もうずいぶん昔の話だが、昭和二十三年、太宰治が小説『グッド・バイ』の新聞連載をはじめるにあたって書いた「作者の言葉」に、「唐詩選の五言絶句の中に、人生足別離の一句があり、私の或る先輩はこれをサヨナラダケガ人生ダ、と訳した」という一節があった。『グッド・バイ』自体は絶筆ということのほかにとりたてて賞味に値するほどのものではなかったけれど、見つけものはこの漢詩の和訳に触れたくだり。概していえば、太宰治の作品で賞するに足りるのは初期の短編に限られ、戦後の諸作は多く少女愛玩の読物を出ない。それでも、ふと心を揺らすこうした寸言に時折出会うことがあって、かねてから私はそれを徳としている。
『傑作の条件』(向井敏著、文春文庫)



























