前書きに「昭和十年十一月十六日、妻死去」とあります。
最初の妻、京が服毒自殺した際の葬儀で詠まれたもの。
このとき久保田万太郎は45歳。
来る花も来る花も菊のみぞれつゝ
芝のころ(その一)(昭和九年六月―十七年)
91 買つて来しものに夜寒のさくらもち
92 瀬の音をきゝつゝ貼りし障子かな
93 夕時雨野の枯いろの濃かりけり
94 来る花も来る花も菊のみぞれつゝ
95 ふッつりと切つたる縁や石蕗(つは)の花
96 二七日(ふたなぬか)すぐ三七日(みなのか)の青木の實
97 掃くすべのなき落葉掃きゐたりけり
98 短日や鏡のなかの山の膚
99 短日の耳に瀬の音のこりけり
100 久方の空いろの毛絲編んでをり
101 一月や日のよくあたる家ばかり
