2021年12月26日日曜日

[積読立読斜読] 太宰治『晩年』(新潮文庫版)(3)


2021年後半の読書テーマ「太宰治の主要作品を読む」、やっと終了。

どうも短編が苦手で、かつ太宰治の作品自体もあまり好感が持てず、苦労しました。

ただし最初のの短編集『晩年』は魅力的な作品が多かったです。


『猿面冠者』は、昭和9年「鶴」に発表。自身の創作過程を作者自体が説明しながら作品が進む実験的な短編で、タイトルが損してますが十分傑作だと思いまうす。


『逆行』は掌篇四品で構成されていて、そのうちの「盗賊」が第一回の芥川賞の次点となりました。川端康成の選後評は「私見によれば、作者目下の生活に厭な雲ありて、才能の素直に発せざる憾みあった」は的を得た卓見です。


『彼は昔の彼ならず』は昭和9年「世紀」に発表。作者の分身と観られるダダイズム的な男の描写が滑稽。


『ロマネスク』は昭和9年「青い花」に発表。太宰の物語の創作者としての意外な一面が発揮された寓話集。奇想天外な「笑い」を誘う佳品。


『玩具』は昭和10年、『陰火』(これも四つの掌篇小説から構成)は昭和11年発表。


『めくら草紙』は昭和11年「新潮」に発表。初期の創作14編とは別の時期に書かれたもののようです。この頃の太宰はドラッグ中毒(パビナール)で川端の言う「生活に厭な雲ありて」状態であり、当方も好きになれませんでした。ただアフォリズムは第一級で、作品の最後「この水や、君の器にしたがうだろう」は太宰の創作の中心を衝いています。


新潮文庫版『晩年』の奥野健男さんの解説を添付します。