2021年後半の読書テーマであります「太宰治の主要作品を読む」。ここへきて遅々として進まず。こういう場合は「分断して統治せよ~Divide et impera(ディヴィデ エト インペラ)」。ちょっとづつ読んで投稿します。
『晩年』は太宰治の第一創作集。昭和11年砂子書房より単行本化。なぜ第一創作集に「晩年」と名づけたのかは、27歳の太宰の屈折した心情があるようです。
共産党活動に一時傾倒した太宰は、津軽屈指の大地主が生家である自分を、いずれ「滅亡の民」となる側の人間だと信じ「遺書」のつもりで創作集を書き溜めたそうです。
グラフィティ風の佳作「葉」の冒頭に引用されるヴォルレーヌの詩の断片があります。
撰ばれてあることの
恍惚と不安と
二つわれにあり
「葉」は昭和9年4月、季刊同人誌『鷭(ばん)』に発表。『晩年』以前の草稿または廃棄した作品からの抜粋をアフォリズム風に配列したものとされています。キャッチ―な惹句から作品を組み立てられる太宰の特徴がよく出た佳品と思います。
「思い出」は昭和8年、同人雑誌『海豹』に発表。作者の幼年期・少年期を描いた自伝的な作品で作品集『晩年』の中心的な作品。同じモチーフで『人間失格』を描いていますが、開設の奥野健男さんによるとこちらは「自虐的にデフォルメされている」そうで、当方が太宰治を苦手とするのもこの「自虐的なデフォルメ」なのです。「思い出」は実に素直な筆致で好感が持てました。
「魚服記」は昭和8年『海豹』に発表。故郷津軽の自然を背景にした童話風の小品。伸び伸びとした筆致が太宰治のイメージらしくありませんでした。
「列車」は昭和8年『サンデー毎日』の懸賞小説に当選した作品。太宰治名義の初の作品だそそうです。上野駅から青森駅への蒸気機関車を擬人化した意欲的な文体の作品。
「地球図」は昭和10年『新潮』に発表。獄死した江戸時代のバテレンを描いた小品。
「猿ケ島」は昭和10年『文学界』に発表。語り手が実は動物園の猿だったというSF的な手法の小品。
「雀こ」は昭和10年『作品』に発表。故郷津軽の方言で描かれた詩。朗読で聴くのがいいかも知れません。冒頭部分だけですがYouTubeで中村雅子さんという方が朗読されています。津軽弁のエキゾチックな響きは現代では現地でも聴けない響きかも。
本日はここまで。