2021年12月16日木曜日

[積読立読斜読] 『久保田万太郎俳句集』(岩波文庫、2021年)(33)



昭和20年11月、万太郎は鎌倉材木座に移住。

万太郎は自身の境遇を「流寓(るぐう)の旅」と黄昏た境地ですが、

作句は剽軽なものも多い感じです。


「上京、日のくれぐれに帰宅」の前書のある、

 

これやこの冬三日月の鋭(と)きひかり


「妹、上京、けふは一日、留守番なり」の前書きの、


日向ぼつこ日向がいやになりにけり


また、「日曜、しかも快晴、心、太(はなは)だ和む」の前書きの


東京にでなくていゝ日鷦鷯(みそさざい)


けっこう境遇を気に入っているようにも感じられますが。




流寓抄 その一


313 ふゆしほの音の昨日をわすれよと


314 これやこの冬三日月の鋭(と)きひかり


315 十日まだ一度もふらず冬の海


316 日向ぼつこ日向がいやになりにけり


317 松ばやしぬけねばならず冬の月


318 鎌倉の果から果の小春かな


319 度外れの遅参のマスクはづしけり


320 波しろき海の極月(ごくげつ)来りけり


321 東京にでなくていゝ日鷦鷯(みそさざい)


322 いまは亡き人とふたりや冬籠


323 昔、男、しぐれ聞きゝ老いにけり