300 うち晴れし淋しさみずや獺祭忌
301 ひややかに日を漉す木々となりにけり
302 名月や電話のベルのなりつづけ
303 櫻落葉櫻のふとき幹ならび
304 小春冨士夕かたまけて遠きかな
305 草の尖(さき)さはる小春の障子かな
306 玄関に写楽をかけて冬構へ
307 幾何は好き代数はいや浮寝鳥
308 葡萄酒のこの濃きいろや夜半の冬
309 障子あけて飛石みゆる三つほど
310 墓原に雪こそつもれ年の暮
311 この猪口のいと小ささよ寒の入
312 空風の中から泣いて来し子かな
獺祭忌:正岡子規の命日、9月19日
浮寝鳥:越冬のため秋から冬にかけて日本に渡り鳥。冬季は水面で眠る習性がある