日本社会では20代前半で大半の人々の最終学歴が確定し、大学ランク(学校歴)を含む学歴によって就業機会格差があり、初職は現職と関連することになる。(初期の格差は縮小しない)。
<建設的な議論のための4ヵ条>
①価値・目標・機能の自覚化
・近代社会の基本理念である「平等」(全員の機会の平等)と「自由」(個人の選択の自由)を意識すること
・「平等」を重視する場合、教育目標は「公平」で、教育に期待される機能は「平等化」となる
・「自由」を重視する場合、教育目標は「優秀さ」「効率」の追求となり、、教育機能は「差異化」となる
・市場原理的に「小さな学校」を志向するのか、役割を拡大し「大きな学校」とするのか価値判断が求められる
・文部科学省の追加予算配分では指定校のSES数値が高い。「自由」・「優秀さ」を重視した政策と言える
②「同じ扱い」だけでは格差を縮小できない現実
・日本の義務教育制度は高度に標準化された「平等化」機能があるが、学力格差は縮小しない
③教育制度の選抜機能
・教育制度には人を社会的「身分」に振り分ける選抜機能があり、それが期待されている
④データを用いて現状と向き合う
複合的な要素がからみあって教育格差が生じていることを理解し、現状把握に徹して対策を検討する
「現実」と向き合わずに高尚な「理念」先行によって失敗した事例
・学校群制度
・「ゆとり」教育
・高校教育改革
「生まれ」によって学力や大学進学期待など長期間の経験蓄積に基づく格差があるという「現実」と向き合わずに実施された実践・政策・制度変更によって影響を受けてきた児童・生徒たちの中で、自身の可能性が失われたことを自覚である人は皆無に近い(検証が難しい)
標準化された制度(筆記試験等)のほうが低SESの生徒は便益を受けやすい。
大切なのは、あらゆる実践・政策・制度の「よい側面」だけを見て「正しさ」に酔うのではなく、相反する価値・目標・機能の中で葛藤し、総体としての「みんな」の可能性の喪失を最小化することが重要。
教育問題を考える際の提案
<提案1> 分析可能なデータを収集する
<提案2> 教職課程で「教育格差」を必修科目にする
<第7章のまとめ>
①いつの時代にも教育格差・子どもの貧困がある。
②教育意識の地域格差は2000年代以降拡大している。
③住民大卒割合の地域格差が戦後一貫して緩やかに拡大。
④格差は未就学時点で存在。親学歴によって異なる時間を過ごしている。
⑤「多様な(背景の)子が通う公立校」は小学校であっても幻想に過ぎない。
⑥中学校入学時点で経験の蓄積に大きな格差があり、中学校教育への適応度と関連している。
⑦私立中学進学層が抜けても公立中学校間には大きなSES格差がある。
⑧高校受験によって、小中学校よりも大きな「生まれ」の学校間格差が生じる。
⑨他国と比較すると日本の児童・生徒のPISA平均値は高い。しかし、「生まれ」による学力格差について日本は凡庸な社会である。
⑩他国と比べて日本の高校教育制度は特異。中退があり得る、教員の期待が低い教育困難な低ランク校は低SES校でもある。
⑪価値・目標・機能の自覚化、「扱いの平等」の限界、教育制度の選抜機能を意識したうえで、現状把握なき「改革」のやりっ放しを止めよう。
⑫分析可能なデータの継続的収集・効果測定による実践の漸次的改革を通して、一人でも多くの可能性を最大限に開花させよう。
⑬教育格差を学ばずに教員免許取得が可能な現状を改め、「教育格差」を必修にしよう。
低SESの子供たちの可能性に投資しないことで、わたしたちは潜在的な損失を受けているかもしれない。
