阿部昭(1934-1989)は文芸評論家の小田切秀夫の命名という「内向の世代」を代表する短編小説家です。「60年代における学生運動の退潮や倦怠、嫌悪感から政治的イデオロギーから距離を置いた作家・評論家」をさし否定的な意味で使われたそうです。概ね1930年代に生まれ、1965年から1974年にかけて抬頭したようです。「ようです」と書いたのは今日あまり顧みられることがないのではないかという疑念からです。他の「内向の世代」の作家には、古井由吉、後藤明生、日野啓三、黒井千次、小川国夫、坂上弘、高井有一、阿部昭、柏原兵三など。
「桃」という短編は自分の幼年時の記憶を繰り返し追想するたびにある疑念が膨らんでいき混乱してしまうという特に抑揚のない作品で、好き嫌いが分かれるかもしれません。
このような内向的な作品が隆盛を極めた時代があったのでしょう。
<阿部昭のプロフィール>
小説家。1934年広島県に生まれ、翌年より神奈川県藤沢市鵠沼で育つ。東京大学仏文科卒業後、ラジオ東京(現在のTBS)に入社。62年に「子供部屋」で文學界新人賞を受賞。68年に処女短編集『未成年』を刊行。その後、71年にTBSを退社し、創作活動に専念する。73年『千年』で毎日出版文化賞を受賞。76年に『人生の一日』で芸術選奨新人賞受賞。幼少より暮らした鵠沼を舞台にした作品が多く、また、短編小説の名手として知られ、数多くの作品を残している。
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