2020年11月27日金曜日

[惹句どんどん] 三浦哲哉(映画評論家)

自分がふだん「おいしい」とか「おいしくない」という場合のその基準など、この世界に存在する無数の基準のなかのほんの一つにすぎないということに気づかされる。



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他人がなにをどう作りどう食べているかを知ると、とうぜんながら、「おいしい」のかたちが千差万別であることにしみじみと思いいたる。そして、自分がふだん「おいしい」とか「おいしくない」という場合のその基準など、この世界に存在する無数の基準のなかのほんの一つにすぎないということに気づかされる。そのことを貴重だと思う。なにか、肩の荷をおろしたようなほっとする気分にさえなる。それはつまり、自分が抜き差しがたく囚われている「習慣」の狭さに気づき、それを相対化し、ほんの少しだけ、その囚われから解放されるきっかけを与えてくれるからではないか。これも料理の本を読む理由と言えるだろう。いろいろな「おいしい」を知って身軽になること、優しくなること。


現在読書中『食べたくなる本』(三浦哲哉著、みすず書房、2019年)より。著者は青山学院大学准教授、表象文化論(サスペンス映画専門)、1976年福島県郡山生まれ。