2020年11月11日水曜日

[惹句どんどん] 谷崎潤一郎 『陰翳礼賛』より

   

 

私は、われわれが既に失いつつある陰翳の世界を、せめて文学の領域へでも呼び返してみたい。

文学という殿堂の檐(のき)を深くし、壁を暗くし、見え過ぎるものを闇に押し込め、無用の室内装飾を剥ぎ取ってみたい。

それも軒並みとは云わない、一軒すらいそう云う家があってもよかろう。

まあどう云う工合になるか、試しに電燈を消してみることだ。

 

『陰翳礼賛』(谷崎潤一郎)より