2020年11月1日日曜日

[積読立読斜読] 『名句の所以(ゆえん)』(小澤實著、毎日新聞出版、2018年)冬の部 (3)


しづかなるいちにちなりし障子かな(長谷川素逝)

老人のかたちになつて水洟かむ(八田木枯)




魴ぼう(ほうぼう)に紺青(こんじょう)の夢ありにけり(大嶽青児)


      魴ぼうという魚は、紺青の色の夢を見ることだなあ


牡蠣啜るするりとと舌を嘗めにくる(坊城俊樹)


重き書は手近に置いて冬籠(佐藤赤緑)


金屏風何んとすばやくたたむこと(飯島晴子)


しづかなるいちにちなりし障子かな(長谷川素逝)


せきをしてもひとり(尾崎放哉)


女人(にょにん)咳きわれ咳つれてゆかりなし(下村槐太(かいた))


咳をして死のかうばしさわが身より(山上樹実雄)


咳が出ると、わたしの病身から死が近付いている気配、死の香ばしさを 嗅ぎ取ってしまう


老人のかたちになつて水洟かむ(八田木枯)


母死ねば今着給へる冬着欲し(永田耕衣)