2020年11月26日木曜日

[積読立読斜読] 『13億人のトイレ 下から見た経済大国インド』(佐藤大介著、角川新書、2020年)

 



現在はコロナ禍で休止中ですが「広島掃除に学ぶ会」というボランティア団体で月1回程度学校のトイレ掃除に参加していました。「インドのトイレ事情」というニッチなテーマに惹かれて購入。

著者は共同通信のインド特派員で2020年5月まで約4年間インドに滞在。人口が10年内に中国を抜き、GDPは現在日本の半分程度だが、2029年には上回る予想がある、経済成長著しいというイメージがありますが、国内では格差が非常に激しく、数字と現実の乖離が海外からは理解しずらい思いを持っていたそうで、取材の対象を「トイレ」に絞ることで現実を直視したのが本書の成立過程です。出た結論が帯にあるコピーの「インドはトイレなき経済成長だった!?」です。

人口約13億のうち8割が信仰するヒンドゥー教が排泄物を不浄のものとして家屋内にトイレを設けないこともあり、約6億人がトイレのない生活を送っているそうです(屋外排泄)。モディ首相は全国民にトイレを普及させる「クリーン・インディア」キャンペーンを2018年から展開中で5年で1億箇所以上のトイレ設置が目標だそうです。本書によると実際には維持管理が難しいのと長年の屋外排泄の習慣で使われていないトイレも多く、統計の数字は信頼がおけないそうです。

全国に下水道のインフラがないため、排泄物は河川に流すのが主流で(浄化槽は日本独特の技術だそうです)、地区によって流せないトイレ(乾式トイレ)はトイレ下部にためるしかなく、清掃が大変なのは想像に難くないです。清掃に従事する人は憲法上カーストによる差別はありませんが、最下層の「ダリット」と呼ばれる貧困層(人口の約13%)で、多くは世襲制だそうです。

本書には言及がありませんでしたが、国連主導で作られた持続可能な開発目標(SDGs)で定められた17の目標のうち、その6番目は「安全な水とトイレをみんなに」というものです。WHOの統計によるとトイレにアクセスできない人々が世界人口77億人のうち、20億人にも達し、トイレ設備がまったくない学校が23%もあるそうです。

日本のメーカーはじめ各国から設置が簡単で安価なトイレを開発して、インドの政策に協力しているようですが、緒に就いたばかりで、見通しは大変暗いものがあります。

学校のトイレ掃除ができる国、ボランティアでトイレ掃除をする人がいる国、というのは世界中でもまれな例であり、先人の努力による恩恵と感謝しつつ後世に伝える必要があると、思った次第です。