忘年や身ほとりのものすべて塵(桂信子)
鍬だこの五指手袋に充ち満てり(小出秋光)
毛糸選る欲しき赤とはどれも違う(山下知津子)
北風の中われを指す指を見き(橋詰沙尋)
隙間風その数条を熟知せり(相生垣瓜人)
霜掃きし箒しばらくして倒る(能村登四郎)
霜ばしら苔をうかすや墓の前(田島柏葉)
命あるものは沈みて冬の水(片山由美子)
阿修羅迦楼羅緊那羅摩呉羅伽大火かな(尾崎迷堂)
スクリューを船より外し年用意(棚山波朗)
忘年や身ほとりのものすべて塵(桂信子)
今年もはや終わりである。さまざまなことのあったこの一年を意識的に忘れよう としている。そうしてみると、この身のかたわらにあるものすべてが、もやは塵 のように思われてならない。










