2020年11月4日水曜日

[積読立読斜読] 『名句の所以(ゆえん)』(小澤實著、毎日新聞出版、2018年)冬の部 (4)


忘年や身ほとりのものすべて塵(桂信子)



 鍬だこの五指手袋に充ち満てり(小出秋光)


毛糸選る欲しき赤とはどれも違う(山下知津子)


北風の中われを指す指を見き(橋詰沙尋)


隙間風その数条を熟知せり(相生垣瓜人)


霜掃きし箒しばらくして倒る(能村登四郎)


霜ばしら苔をうかすや墓の前(田島柏葉)


命あるものは沈みて冬の水(片山由美子)


阿修羅迦楼羅緊那羅摩呉羅伽大火かな(尾崎迷堂)


スクリューを船より外し年用意(棚山波朗)


忘年や身ほとりのものすべて塵(桂信子)

今年もはや終わりである。さまざまなことのあったこの一年を意識的に忘れよう としている。そうしてみると、この身のかたわらにあるものすべてが、もやは塵 のように思われてならない。