2014年8月6日水曜日

[積読立読斜読] 『恋しくて Ten Selected Love Stories』

[積読立読斜読] 『恋しくて Ten Selected Love Stories』



旧作ですが。『恋しくて Ten Selected Love Stories』(村上春樹 編・訳、中央公論新社、2013年)。

誕生日を巡る英米の短編小説のアンソロジー『バースティ・ストリーズ』に続いて、村上春樹が今度は恋愛小説ばかりを集めて短編小説集を編んでくれました。自身の1作も含めて10編。『恋しくて Ten Selected Love Stories』。小説家で英語圏の小説が好きで翻訳もできてという村上春樹さんならではの仕事ですね。

ちょうど今年短編集『女のいない男たち』を出版されたばかりで、翻訳集ではありますが、昨年の「女のいる男たち」『恋しくて』(女性が語り手もいますので、男のいる女たち、でもあります)は、ちょうどアンサー・ソングのようで興味深いです。

主に雑誌『ニューヨーカー』からのセレクションですが、なかなか一筋縄ではいかない恋愛小説が多く、編者の村上春樹さんの作品「恋するザムザ」にしてからが、カフカの「変身」から再び人間に変身したムカデの恋愛の話だし、ローレン・グロフの「L・デバードとアリエット―愛の物語」は元オリンピック水泳選手と大富豪の娘の恋愛の話で、それに世界的に流行した「スペイン風邪」がからむという構成。

ジム・シェパード「恋と水素(変わった題ですが原題も"Love and Hydrogen"です)」に至っては飛行船「ヒンデンブルグ号」のナチ所属のゲイの乗組員2人の恋愛の話なのです。

比較的ストレートなのが、マイリー・メロイの「愛し合う二人に代わって」という同級生同士の恋愛小説。こちらは別途紹介します。

当方は恋愛感情からはすでに遠く離れた茫漠とした過去の話ですが、恋愛をしていた時の熱い気持ちや、恋愛感情のなくなりつつある現在の冷めた気持ちを、交互に対比させつつ、手慣れた訳文で、質の高い恋愛小説を読めるというのは、日本の読者というのは幸福だと思いますね。

昨年のノーベル文学賞を村上春樹と争ったて受賞したカナダのアリス・マンローの作品も収録されてますが、偶然でしょうね。

装丁は竹下夢二の「黒船屋」の一部を大胆に使った洒落たもの。夢二は今年生誕130年だそうです。