2014年8月7日木曜日

[積読立読斜読み] 同窓会小説としての「愛し合う二人に代わって」

[積読立読斜読み] 同窓会小説としての「愛し合う二人に代わって」



村上春樹による恋愛小説集『恋しくて』の中の1編。

オリジナルは2012年に『ニューヨーカー』誌で発表。

アメリカの女性作家、マイリー・メロイ(Maile Meloy)は1972年モンタナ州生まれ。

現在はロサンゼルスに在住。雑誌『ニューヨーカー』等に作品を発表。短編作家。実の弟はロックバンドのベーシストです。

モンタナ州の田舎町の高校で同級生だった二人。ウィリアムはピアノが得意というだけの内向的で不格好な高校生。あこがれのブライディーは金髪の派手な女優志望の女の子。

告白できないまま都会に出て、ウィリアムは音楽家としてそこそこのキャリアを作ったが、ブライディーは夢破れてもとの田舎町でウェイトレスをしている。

二人は再会し。。。という実にありきたりのストレートすぎる恋愛小説ですが、作者が用意したのは、モンタナ州だけにあるという新郎・新婦二人とも代理人で結婚届が可能な"The Proxy Marriage"(小説の原題でもあります)というシステム。

弁護士を父に持つブライディーの依頼で二人は代理人を務めていきます。この構成に9.11からイラク戦争に至るアメリカの近代史が重なり、結構重層的な余韻のする短編となりました。

ウィリアムはオーデンの詩にある「もし互いに注ぐ愛情が等量でありえないのなら、愛する量が多い方に私はなりたい」という一節をこじつけであると信じたかった。

結末でブライディーに告白したときは「等量の愛情。これがそういうものなのか?いや、ぴったり等量である必要なんてない。等量に近ければそれでいいじゃないか」とブライディーの愛を受け止めたのでした。めでたしめでたし。です。

『ニューヨーカー』ではこの短編の全部と、ポッドキャストで朗読まで聴けますので、英語に自信のあるかたは原文でどうぞ。

そうですね。高校のころは当方は傲慢で「等量の愛」とかいう気持ちはさらさらなかったような気がします。今頃気づいても遅いけど。