2021年8月9日月曜日

[積読立読斜読] 『この世界の片隅に(下)』第44回 人待ちの街(昭和21年1月)

 


スローリーディング中の漫画原作『この世界の片隅に』。

本日は「第44回 人待ちの街」を読みました。第45回で終了です。漫画原作では特定の地名などの説明的な描写が省いてあり、両親の死亡を知ってもあまり悲壮感もなく、淡々とした記述が続きます。読者に深読みを促す作品です。

最近ネットフリックスで劇場版の監督、片渕須直さんのドキュメンタリーを観たのですが、監督そのものが深読みを促す漫画原作に心を打たれたようで、具体的には原作の「相生橋の変遷」のさり気ない描写を解説されています。






漫画原作の「第1回 冬の記憶(昭和9年1月)」の相生橋(具体的な地名は説明がありません)の描写です。周作さんとすずさんが初めて出会った場所として出てきます。この時の相生橋は現在のようにT型ではなくて市内電車を通す橋と歩行者用の木製の橋がありました。漫画原作では手前に木製の橋、後ろにコンクリート製の橋が見えます。




こちらは昭和21年1月の相生橋の描写。橋はT字型に改装されています。橋の欄干は戦争中の金属供出によりコンクリート製に変わっていて、原爆の爆風によって斜めに傾き補修が間に合わない様子まで(説明はありませんが)丁寧に描かれています。

周作さんのセリフ「すずさん わしとすずさんが初めて会うたんはここじゃ この街もわしらももうあの頃には戻らん 変わり続けて行くんじゃろうが」とあります。この時周作さんとすずさんが見た広島市内の風景は(原作では遠景描写はありませんが)原爆によって建物のが全壊した殺伐とした風景なのです。



<すずの出来事>

昭和21年1月

草津の叔父の家を訪ね、原爆症の症状の出始めたすみと開会。両親の死を知る。

すずは出張から帰った周作と落ち合い、初めて二人が出会った橋の上で話す。

バケモノと再会する。


公式アートブック『この世界のさらにいくつもの片隅に』(宝島社、2019年)より