2020年2月9日日曜日

[積読立読斜読] 『短編画廊』(ローレンス・ブロック編、ハーパーコリンズ・ジャパン、2019年)より ジェフリー・ディヴァ― Jeffery Deaver




作者:ジェフリー・ディヴァ― Jeffery Deaver
ホッパーの絵:Hotel by a railload, 1952
原題:The incident of 10 november
日本語タイトル:11月10日に発生した事件につきまして


著者は1950年シカゴ生まれ。ミステリー・犯罪小説の作家で世界的なベストセラー作家です。映画『ボーン・コレクター』の原作者。

この作品は技ありの一編です。ホッパーの絵が一種の暗号として使われ、冷戦下のソビエトから核兵器開発に関係する物理学者の亡命事件を描いています。

P184
エドワード・ホッパーの絵葉書こそ、もっとも重要な意味を持つ一枚だったのです。
この油絵は『線路沿いのホテル』と題された作品で、二人の人物が描かれています。薔薇色のワンピース姿で本を読んでいる中年の女と、上着も帽子も着けずに窓の外を眺めている男です(駅で問題の男女に見覚えがあると思った理由はこれです。その少し前に、ホッパーの絵画を印刷した絵葉書を目にしていたのです)。
この絵は、東ベルリンで脱出作戦を実行する工作員を見分ける手がかりを同志ディーターに伝えていました―二人はホッパーの絵にあるとおりの服装、同じポーズで待っていると。

作品は全編、冷戦下にある1954年、モスクワへ送られてたある諜報部員の陳情書の体裁をとっています。複数の絵葉書によって亡命の作戦を打合せするという趣向でした。

おそらく処刑は免れない諜報部員の切々たる陳情書が続くので、どうなるのかは心配ですが、暗号代わりにホッパーの絵が使われるという意外な設定で感心しました。