2020年2月7日金曜日

[積読立読斜読] 『ペンギン・ブックスが選んだ日本の名短編29』より 澤西祐典


延々と読んできましたペンギン版日本文学短編集、最後の一編澤西祐典さんの「砂糖で満ちてゆく」(2013年)を読んで読了です。

澤西さんはこの選集では最年少の作家。ご専門は芥川龍之介。芥川は大変な勉強家で英米の怪奇短編小説に相当数目を通していたのだそうで、2018年に芥川選の『芥川龍之介選 英米怪異・幻想譚』(岩波書店)出版の際、編者と訳者に名を連ねています。

この作家の作品を読んだのは初めてです。編者のカテゴリーでは「恐怖」という分類です。

「全身性糖化症」という体が糖に代わってしまって死んでしまう不治の病に侵された母親を看取る娘の話です。全身が「砂糖で満ちてゆく」「全身性糖化症」という病気を作り出した時点で勝負あったというところでしょうか。作家的想像力が動き出します。

この作家は(未読なので申し訳ありませんが)代表作の『フラミンゴの村』にしてからが、19世紀末ベルギーの片田舎で村中の女たちがフラミンゴに変身してしまう話とか、最近では、尾道銘菓(宮崎にも同様のお菓子あり)の「鯨羊羹」は鯨の皮を模して造られた羊羹ですが、その羊羹で実物大のクジラを作る夢想にとりつかれる(『すばる』(2019年6月号)、とか、突拍子もない設定から作品を作り上げていくのがお得意のようです。

「恐怖」のほうは残念ながら途中で結末が予想でき、あまり怖くはありませんでした。作者の意図とは違うかも知れませんが、死者への尊厳が足らない、死者に寄り添えない、親族に対して、生活を犠牲にして最後まで看取った末娘の復讐譚とみました。


著者プロフィール
澤西祐典(さわにし・ゆうてん)


1986年生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。2011年『フラミンゴの村』(集英社)で、すばる文学賞受賞。その他、共著『文学2014』(日本文藝家協会編、講談社)、『小辞譚』(猿江商會)等がある。2015年秋より、別府大学文学部国際言語・文化学科講師。第二回べっぷフロマラソン完湯。第7037代別府八湯温泉道名人。

http://www.kankanbou.com/books/novel/0271furomarason
書肆侃侃房のサイトより