2020年2月20日木曜日
[積読立読斜読] 山口慎太郎『「家族の幸せ」の経済学』(光文社新書、2019年) 第6章 離婚の経済学
第6章で終わりです。
著者の語り口はあくまでソフトなのですが、行間から膨大な知見に基づく科学的経済的な背景が想像できる良書でした。また著者は科学的・経済的に正しいからと言って、その意見を強制はしていません。
ただし政策の導入については科学的・経済的な根拠を示すべきだという強い意見を持っており、諸外国に比べて、「家族の幸せ」につながるようなデータが日本では圧倒的に不足していることを嘆いています。
当方は子育ても終わり、おそらく離婚は経験せずに済みそうです。直接より多くの「家族の幸せ」をもたらしてくれそうな政治家を応援する際に大変参考になる新書でした。
=================================================
本書では、結婚・出産・子育ての科学的研究を紹介し、何が真実で、何が「神話」なのかを明らかにする。
ただし、科学的根拠だけで、私たちがどう生きるかを決められるわけではない。
科学的研究は、私たちがよりよい選択をする上での助けにはなるが、「何が自分にとっての幸せなのか」までは教えてくれない。
第6章 離婚の経済学
「家族の幸せ」を考える本書の趣旨から外れているような感じを抱くが、結婚生活がうまくいっていないにもかかわらず、法律によって無理やり「夫婦」として縛りつけられるのは、当事者の夫婦も子供にとっても不幸であり、その場合は「離婚」が家族の幸せのための選択肢となりえる。
1 「3組に1組が離婚している」は本当か?
離婚についてのルールの変化は、たとえ離婚に至らない場合でも、夫婦間に影響を及ぼす場合がある。
「離婚率」の正しい見方
「3組に1組が離婚している」は「離婚件数÷結婚件数」(簡便法)の数値。分母は今年の数値だが、分子の離婚件数の結婚は過去に行われたもの。真の離婚率が変化していなくても、結婚件数が減るのにともなって、離婚率が上昇してしまう実態とは違う率が出てしまう。
離婚件数の国際比較では、日本は1.7件(人口1000人あたり)、OECD平均の1.9よりやや少ない。
離婚が少ないのはカトリックの影響が強い国、アイルランド、チリ等。長い間離婚を法的に認めていなかった。
日本の離婚要件はカトリックの影響の強い国に比べると簡単(協議離婚は届け出のみ)。
夫婦間で合意のない離婚は簡単ではない。
有責主義:相手に非があることを離婚の要件とする
破綻主義:結婚生活が実施的に破綻しているかを重視
消極的破綻主義:結婚生活の破綻についての有責者には離婚を請求させない(実際の日本の裁判で取られる立場)
2 離婚しやすくなることは、不幸だとは限らない
離婚法改革が行われた70年代には、欧米で離婚率が急上昇したが、法改革だけが原因ではなく、人々の価値観の多様化や、女性の労働市場進出などの原因も考えれれる。
離婚手続きにおける破綻主義の導入で、最も救われたのは配偶者からの暴力に苦しむ人々(妻からの夫への暴力もアメリカでは半数を占める)。
実際に離婚するかどうかはともかく、「いざとなれば離婚することができる」という選択肢があることが重要。
離婚しやすくなるとDVが減る。
離婚法改革で、自殺を10%以上も減らしている。法的に結婚している夫婦における、夫からの暴力が30%減少(スペインの研究)
3 離婚は子どもたちにどう影響するか
親の離婚を経験した子どもはさまざまな困難に直面しているが、離婚が直接の因果関係は不明で、社会経済的に恵まれない家庭に育ったことの原因が大きい。
アメリカの離婚法改革の結果、子どもには悪影響
・子どもの大学進学率の低下
・大人になってからの所得がマイナスの影響
・離婚を経験する人の割合が増えた
・大人になってからの自殺率が増えた
・子どもが暴力犯罪に関与する確率が10%近く増えた
離婚しにくくするのではなく、離婚後のフォローを
離婚そのものが子どもの発達に悪影響を及ぼすというよりも、離婚が生み出す貧困が、子どもの発達に悪影響を及ぼしている
子どもの幸せという観点から考えても、離婚の手続きを難しくするよりは、離婚が生み出す貧困の悪影響を避けるような社会の仕組みが必要。
子どものいる貧困家庭への金銭的支援の充実、学費・給食費の無償化、医療費に対する補助などが助けになる。
4 共同親権から「家族の幸せ」を考える
2016年時点で日本では、85%のケースで母親が親権を持つ
諸外国では共同親権を導入済の国もある
(1)法的共同親権…子どもの進学などの重要場面で共同で意思決定を行う
(2)身体的協同親権…監護権(子どもと過ごす時間を均等にする)
母親の意見が強い家庭:子どもに対する支出が多くなる
父親の意見が強い家庭:子どもの支出が少なく、父親自身に対する支出が多くなる傾向
協同親権導入の最大の目的は、離婚後の子どもの幸福
ある研究では、離婚した母親が、子どものの養育費を受け取る確率が9%上昇
離婚後共同親権を導入したアメリカの州では、男子の自殺率が9%減少
結婚している夫婦における、夫から妻への暴力は2.7%減少
(日本で)共同親権を認める上で最も重要な点は、それが「子どもの最善の利益」にかなっているかどうか。
