[積読立読斜読] (特別編)終活断捨離文庫100冊プロジェクト 岩波文庫『解説目録』(2022年版)
大型の書店で無料で入手できる外、岩波書店のサイトからダウウンロードも可能です。絶版や品切れを除いてすべての岩波文庫の解説・索引つきの目録です。
他社の文庫が「古典」から離れて単なる単行本の文庫化に失墜している日本の出版状況に敢然と発刊当時からの方針を崩さず、岩波茂雄の発刊の辞「読書子に寄す」にある「いやしくも万人の必読すべき真に古典的価値ある書をきわめて簡易なる形式において逐次刊行」通りの方針を今も貫き通しています。
大手の書店でも岩波文庫の店頭在庫は少なくなってしまいましたが、日本の誇りうる出版文化事業ですので、岩波文庫はなんとか持ちこたえてほしいです。
前置きが長くなりましたが、「終活断捨離文庫100冊プロジェクト」にこの目録を加えました。残念ながら実際に読んだ岩波文庫は極めて少ないのですが、簡潔にして要を得た解説文を読んでいるだけで、読んだ気持ちになり教養が身に付いた気がします。
例えば適当に選んだヴァージニア・ウルフの『灯台へ』の解説は、
「スコットランドの孤島の別荘.哲学者ラムジー氏の妻と末息子は,闇夜に神秘的に明滅する灯台への旅を夢に描き,若い女性画家はそんな母子の姿をキャンバスに捉えようとするのだが――第1次大戦を背景に,微妙な意識の交錯と澄明なリリシズムを湛えた文体によって繊細に織り上げられた,去りゆく時代への清冽なレクイエム.」
となっていてまだ見ぬ世界への読書慾を湧きたてます。
よく陳腐な企画で「無人島に持っていく●●」というのがありますが、文庫本一冊を選べと言われたら本書が適当かもしれません。
岩波文庫に必ず記載のある刊行の辞を引用します。
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読書子に寄す
――岩波文庫発刊に際して――
岩波茂雄
真理は万人によって求められることを自ら欲し、芸術は万人によって愛されることを自ら望む。かつては民を愚昧ならしめるために学芸が最も狭き堂宇に閉鎖されたことがあった。今や知識と美とを特権階級の独占より奪い返すことはつねに進取的なる民衆の切実なる要求である。岩波文庫はこの要求に応じそれに励まされて生まれた。それは生命ある不朽の書を少数者の書斎と研究室とより解放して街頭にくまなく立たしめ民衆に伍せしめるであろう。近時大量生産予約出版の流行を見る。その広告宣伝の狂態はしばらくおくも、後代にのこすと誇称する全集がその編集に万全の用意をなしたるか。千古の典籍の翻訳企図に敬虔の態度を欠かざりしか。さらに分売を許さず読者を繋縛して数十冊を強うるがごとき、はたしてその揚言する学芸解放のゆえんなりや。吾人は天下の名士の声に和してこれを推挙するに躊躇するものである。このときにあたって、岩波書店は自己の責務のいよいよ重大なるを思い、従来の方針の徹底を期するため、すでに十数年以前より志して来た計画を慎重審議この際断然実行することにした。吾人は範をかのレクラム文庫にとり、古今東西にわたって文芸・哲学・社会科学・自然科学等種類のいかんを問わず、いやしくも万人の必読すべき真に古典的価値ある書をきわめて簡易なる形式において逐次刊行し、あらゆる人間に須要なる生活向上の資料、生活批判の原理を提供せんと欲する。この文庫は予約出版の方法を排したるがゆえに、読者は自己の欲する時に自己の欲する書物を各個に自由に選択することができる。携帯に便にして価格の低きを最主とするがゆえに、外観を顧みざるも内容に至っては厳選最も力を尽くし、従来の岩波出版物の特色をますます発揮せしめようとする。この計画たるや世間の一時の投機的なるものと異なり、永遠の事業として吾人は微力を傾倒し、あらゆる犠牲を忍んで今後永久に継続発展せしめ、もって文庫の使命を遺憾なく果たさしめることを期する。芸術を愛し知識を求むる士の自ら進んでこの挙に参加し、希望と忠言とを寄せられることは吾人の熱望するところである。その性質上経済的には最も困難多きこの事業にあえて当たらんとする吾人の志を諒として、その達成のため世の読書子とのうるわしき共同を期待する。
昭和二年七月
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