耶馬渓から守実温泉へ泊り峠越えで日田に。
寒いのと木賃宿に慣れたのか諦観した句が逆に魅力。
426 たまさかに据風呂焚くや冬の雨
427 せぐくまる蒲団の中や夜もすがら
428 薄蒲団なえし毛脛を擦りけり
[積読立読斜読] 『漱石俳句集』(坪内捻典編、岩波文庫)明治三十二年 426—435
426 たまさかに据風呂焚くや冬の雨
427 せぐくまる蒲団の中や夜もすがら
428 薄蒲団なえし毛脛を擦りけり
429 僧に似たるが宿り合せぬ雪今宵
430 雪ちらちら峠にかかる合羽かな
431 払へども払へどもわが袖の雪
432 かたかりき鞋(わらじ)喰ひむ込む足袋の股
433 隧道の口に大きな氷柱かな
434 吹きまくる雪の下なり日田の町
435 炭を積む馬の脊に降る雪まだら
426 「守実に泊りて」と前書。429まで同所の作。
429 「家に婦人なし。これを問えば先つ頃身まかりて翌は三十五日なりという。前庭の墓標行客の憐をひきてカンテラの灯のいよいよ陰気なり」と前書。
430 「峠を踰(こ)えて豊後日田に下る」と前書。
