たまには経済書ということで、コンパクトな新書版の『産業革命史―イノベーションに見る国際秩序の変遷』(ちくま新書、郭四志著、2021年)をスローリーディング中。
本日は「第3章 第二次産業革命―アメリカへのパワーシフト(1860年代~20世紀前半)の章の「イギリスの衰退」と「アメリカの産業革命」の節をノートをとりながら読みました。
第3章では他にドイツ・日本・中国の第二次産業革命についての節があるので別途紹介します。
本書にも記述がありましたが、産業革命は一国史観ではなく「世界システム」として捉える必要があります。
●世界のヘゲモニー(覇権)国家としてのイギリス
産業革命・工業化による経済力・軍事力
1760年代から1860年
1851年第1回ロンドン万国博覧会
●ヘゲモニー国家は「国際公共財」を提供する
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「国際公共財」の解説
国際公共財(こくさいこうきょうざい、international public goods)
国際関係における公共財,たとえば航海の自由,自由貿易体制,同盟関係,国連,平和あるいは国際秩序などをいう。この概念が多様な意味をもつのは,国際公共財と呼ぶべきものが覇権国によって供給,維持されるものなのか (覇権安定論) ,あるいは多国間の協調・合意によるものとみるのか (多元主義ないし機能主義) という見解の相違,より究極的には,現在の国際社会を依然として無秩序状態とみるか,それとも相互依存の進展にともなっていまや各国間の協力が必然ないし可能となっているとみるかという理論的枠組みの相違にかかわっているためである。
「排除不可能性」:コストを支払わない人を排除しない
「非排他性」:ただ乗りされても他の人が影響を受けない
●19世紀イギリスが提供した「国際公共財」
自由貿易体制
金兌換制のポンド基軸通貨(国際金本位制)
鉄道・蒸気船のネットワーク
海底電信網
国際的な運輸・通信網
国際郵便制度
国際標準時(グリニッジ天文台)
国際取引法などの国際法体系
強力な軍事力(安全保障体制)
英語(世界言語)
●パクス・ブリタニカの特徴
①強力な海軍
「世界を監禁する5つの錠前」(海軍基地)
ジブラルタル、シンガポール、ドーバー、喜望峰、アレキサンドリア
②自由貿易体制
1776年『国富論』市場メカニズム
1817年『経済学及び課税の原理』(リカード)比較生産費説
③金融的影響・支配
「世界の工場」=「世界の銀行」
●パワーバランスのシフト―イギリスの世界支配の衰退と米国の台頭
19世紀半ばからイギリスの産業技術力は徐々に衰退
蒸気機関から内燃機関を中心とする第二次産業革命
ドイツ・米国の台頭
鉄鋼・電力・石油・科学などの重工業
大規模な生産方式・生産組織
蒸気機関をもたらしたイギリスの産業革命は
ディーゼル機関車、電車・自動車の時代に対応できなかった
●イギリス衰退の背景
①第二次産業革命への転換がうまく行かなかった
②技術人材教育がドイツ・アメリカに劣っていた
③企業家精神(起業家)の欠如
④新規の技術開発・投資が少ない
⑤金融・サービスの利益が大きく、新しい「モノ」作りへの取り組みが遅れた
●アメリカの産業革命
アメリカの産業革命の土壌
工業などに従事する人口が少なかった事も、産業革命を全面的に受け入れる土壌と成り、
1850年代までに北東部を中心に重工業化が進んだ。労働者が大量に暮らす大都市圏が登場。
企業経営を行う経営者や企業に出資する資本家が現れ、資本主義社会と成った。1812年米英戦争(アメリカとイギリスの戦争)で工業化の切っ掛けをつかみ、南北戦争後の1860年代に工業化を急速に発展させた。アメリカ合衆国は独立後もイギリス経済依存体質が続いていたが、第2次独立戦争1812年~1814年の米英戦争でイギリスとの貿易が中断し、工業製品の輸入が減少したので、自国の工業生産が増大し、産業の自立の切っ掛けをつかんだ。
南部の綿花生産地帯では、1793年のホイットニーが考案した綿繰り機が使用され、大農園(プランテーション)で黒人奴隷労働による綿花栽培が発達していた。綿花を原料として、アメリカ=イギリス戦争後、北部の大西洋岸のニューイングランド等に、木綿紡績工業が起こり、ボストンはその中心地として栄えた。
南北戦争後の工業化
北東部では綿工業に次いで、1830年代から機械工業が始まり、国土を西方に拡大したが工業の発達した北部と奴隷制大農園経営を維持しようとする南部の対立が深刻と成り、
1860年代に南北戦争が勃発した。南北戦争が北部の勝利で終わり、工業中心の国作りを目ざす事に成り、1860年代に本格的な産業革命を展開した。アメリカ合衆国は広大な国土と資源に恵まれ、東海岸や五大湖地方の工業地帯が急速に発展して、鉄道建設は1869年に大陸横断鉄道が完成し、ピークを迎えた。又アメリカ議会は北部の主張であった保護貿易主義をとり、産業界を保護する為くり返し関税率の引き上げを行った。
保護策の元で、ロックフェラーによる石油産業、カーネギーによる製鉄業など、工業化が急速に進んだ。又その労働力として、はじめヨーロッパから、ついでアジア各地から大量の移民が移住し、多民族国家アメリカ合衆国が作られた。その結果、東部のニューヨークを始め、中西部のシカゴ、西部のサンフランシスコ、ロサンジェルスなどの大都市が出現した。反面、大都会では金銭的利益を追求する風潮が強くなり、金ぴか時代とやゆされる面もあった。
アメリカの産業革命はドイツと同じように最初から第2次産業革命(重工業中心)として始まり、19世紀末までにイギリスを追い抜いて世界第1位の工業生産力を持つとともに国内で資本の集中が進行して帝国主義段階を迎え、第1次世界大戦後にはアメリカ資本主義が世界を席巻する事と成る。
https://americadaishizen.com/lasvegas/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E5%90%88%E8%A1%86%E5%9B%BD%E9%83%BD%E5%B8%82/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%81%AE%E7%94%A3%E6%A5%AD%E9%9D%A9%E5%91%BD/
●アメリカの産業革命の特殊性・特徴
①イギリスからの外圧
②特許制度がイノベーションの形成を後押し
③互換生産方式
大量生産方式の開発・活用
④移民の国、アメリカン・ドリーム
生産人口の増加、移住した職人への技術発明、起業家、高度な人材
持続的経済成長やイノベーションを支えている
●アメリカの産業革命の注目すべき点
①大量生産方式
②起業家・チャレンジ精神
(移民等による文化の多様性)
●アメリカのヘゲモニーの特徴
①対外援助政策による政治・経済・外交の影響力
②国際システムの設計・主導
IMF,IBDR,GATT
③基軸通貨のドルによる国際金融・通貨システムの支配
④海外への多国籍企業直接投資
●ソ連の封じ込め
1950年代
アメリカは世界の総資本の3/4,工業生産能力の2/3を集中
世界の影響力の原因の一つにソ連等の社会主義陣営の封じ込めがある
①地政学的な封じ込め
②輸出制限
③国際市場での原油価格コントロール

