2021年11月17日水曜日

[積読立読斜読] 『久保田万太郎俳句集』(岩波文庫、2021年)(20)

 




一句二句三句四句五句枯野の句


三の酉しばらく風の落ちにけり



万太郎の小説「三の酉」は、芸妓おさわと酉の市に行こうと約束しながら、彼女の死により果たせなかったのだ。悲しみの虚無感から生まれた一句でしょうか。

酉の市とは、関東を中心とした神社で、11月の酉の日の酉の刻(午後5時~7時)頃から開かれる露店市で、熊手や招き猫などの縁起物を買い、一年の無事と来る年の福を願います。

酉の日は12日ごとに回ってくるので、1回目を一の酉、2回目を二の酉といいますが、11月に3回巡ってくる年もあり、三の酉まである年は火事が多いともいわれています。



芝のころ(その二)(昭和十七年三月―二十年十月)Ⅰ


194 水の音くらきにきこえ十三夜


195 ゆく秋の不二に雲なき日なりけり


196 燗ぬるくあるひはあつくしぐれかな


197 道かへていよいよふかき落葉かな


198 一句二句三句四句五句枯野の句


199 三の酉しばらく風の落ちにけり


200 飲めるだけのめたるころのおでんかな


201 しらぎくのたしかに枯れてしまひけり


202 蓮いけにはすの痕なき師走かな