実はスタン・ゲッツとは関係がないことはありません。
①誕生日が同じ2月2日。
②サイン入りレコードを持っている。
これは1993年に会社派遣でサンフランシスコの英語教室に通っておりましたが、課外授業でワイナリーの見学があり、Robert Pecota Winery という家族経営のワイナリーに行きました。どういう経緯だったか忘れましたが、創業者の Bob Pecota さんとの雑談でスタン・ゲッツの話になり「誕生日が同じというのもの何かの縁だ」と言われて、サイン入りのレコード "Pure Getz"(The Stan Gettz Quartet, 1982)を贈られました。したがってサインは'To Bob, Happy Grapes'となっています。
1991年肝臓ガンで亡くなり、LAのマリーナ・デル・レイ近海で散骨されました。その時に流されたのがこのレコード収録の"Blood Count"だそうで、これも何かの縁かもしれません。
<本書の内容>
誕生から亡くなるまで膨大な取材に基づく編年体の構成です。スタン・ゲッツはキャリアの長い人なので、自伝がそのままジャズの歴史になっていて、原著者のジャズへの思い入れも尋常でなく、ジャズの新たなスタイルが生まれるたびに、その楽曲構成について詳細に解説が入り、極めて真面目なジャズ・ファンと思われます。以下抜粋。
P7
天はスタン・ゲッツに惜しみなく音楽の才能を与えた。絶対音感、リズムのニュアンスに対する類い稀な感覚、見事な読譜能力、そして驚くべき写真記憶。しかしながら彼を有名にしたのは、それらの資質ではない。彼の芸術のエッセンスは、新鮮で美しいメロディーを創り出す才能にあり、即興演奏をおこなう能力にあった。彼はその場その場で作曲をする巨人だった。即興演奏とは会話のひとつの方法なのだと、彼は語っている。
P7
それは言語のようなものだんだ。君はアルファベットを習う。それはスケール(音階)だ。君はセンテンスを学ぶ。それはコード(和音)だ。そして君は楽器(ホーン)を使って即興で話すようになる。即興で話せるっていうのは実に素敵なことだよ。ぼくは実際には自由に話をするのは苦手なんだが、でも音楽的には即席で話すことが大好きなんだ。そしてそれこそが、ジャズという音楽のいちばん根っこにあるものだ。
P9
ぼくの人生とは音楽だ。何かしら捉えどころにない、神秘的な、無意識的なやり方で、ぼくはいつも自分の内部にある張りつめたバネによって、宙にはじき飛ばされ、おおぬね強制的に音楽の完璧さに到達させられてきた。でもそれと引き替えにしばしば―ほとんどの場合ということだけど―人生の他のすべてのものを犠牲にすることになった。
P284
評論家のアイラ・ギトラーはコルトレーンの為している行為を「シーツ・オブ・サウンド(音のシーツ)」と命名した。私は彼の音楽を「シーツ・オブ・サウンド」と呼んだ。彼の用いるテクスチャーはきわめて緻密だったからだ。
P291
コルトレーンは記者たちに言った。「もしそうできるものなら、我々はみんなスタン・ゲッツみたいに吹いていることだろう」。
P359
ジュディー・ガーランドとロンドンのクラブで邂逅
ステージに招いて2曲歌う、スタン・ゲッツはその後ろでオブリガートをつけた
二か月後に亡くなる、享年47.
P440
「ピュア・ゲッツ」のLP制作開始。
P564
訳者・村上春樹さんによるあとがき
<叙情と悪魔> 訳者あとがき
スタン・ゲッツはもちろん類を観ない天才的なテナー・サキソフォン奏者だったが、ジャズの歴史を大きく塗り替えたというタイプの人ではない。もしこの人が存在しなかったら、今あるジャズのかたちはなかったかもしれない…みたいなこともたぶん言えないだろう。そいう点ではビリー・ホリデーやマイルズ・デイヴィスやセロニアス・モンクやジョン・コルトレーンのような人たちとは、少しばかり立ち位置が違っている。言い換えれば、ゲッツはジャズの世界における「革命家」ではなかったということだ。積極的に新しい流れを受け入れてきた、前向きな奏者ではあったかれど、革命的なクリエイターではなかった。ゲッツがその人生を通して終始追求し続けてきたのは、フォームを根元から転換していく音楽ではなく、時代時代に応じて、自らの魂を内側に向けて掘り下げ深めていく個人的な音楽だった。フォームは彼の場合、あくまでhにとつのツールに過ぎなかった。誰かが正しいツールを与えてくれれば、彼は誰にかなわないような最良のやり方でそれを利用し、使用した。しかしそのツールをゼロからこしらえることは、彼の役目ではなかった。
<出版社より内容紹介>
スタン・ゲッツ―音楽を生きる―
ドナルド・L・マギン/著 、村上春樹/訳
発売日 2019年8月27日
3,520円(定価)
フィッツジェラルドこそが小説であり、スタン・ゲッツこそがジャズであった。
ボサノヴァなど新しいスタイルを常に取り入れ、第一線で半世紀近く活躍したスタン・ゲッツ。酒やクスリに溺れていても、ひとたびステージに上がれば自由自在な即興が冴えわたり、どんな楽曲も美しく演奏せずにはいられない。その音楽を愛し続けてきた村上春樹が、いつの日か翻訳したいと願っていた傑作評伝、ついに完訳。
<原著者について>
ドナルド・L・マギン(1927-2012)
作家、ビジネスマン。ディジー・ガレスピー、マックス・ローチ、ソニー・スティット、ローランド・ハナ、ユービー・ブレイク、ロバータ・フラックなどのジャズ・コンサートをプロデュース。カーター大統領政権下のホワイトハウスで3年間勤務した。
本書より


