スローリーディング中の中公新書『徒然草 無常観を超えた魅力』(川平敏文著)、本日は「第5章 古典としてのポテンシャル」を読みました。
近世になって『徒然草』の大ブームが起き、当代の作者によるパロディ、模倣、影響を受けた作品が続々と生まれ、また漢学者による漢訳本も登場します。
第5章 古典としてのポテンシャル
1 近世文学の母体―パロディ・模倣・潜在
現在の日本の国語教育、現代文が主、古典は従、という関係
近世は、書記言語が文語(古典語)、模範は古典にあり
近世の古典とは、当代文学を生み出す重要なモチーフだった
『徒然草』の近世文学への取り込み、3つの類型
(1)パロディ、(2)模倣、(3)潜在
(1)パロディ
古典のような確固たる評価が定まったものを素材として、その本文をもじって卑俗化してみたり、その趣向を反転させて茶化してみたりするもの
和歌とパロディの狂歌
連歌とパロディの俳諧
能とパロディの狂言
『犬つれづれ』(1619年)、男色の故事・逸話
『吉原徒然草』(1704~16年)、吉原遊郭の風物
(2)模倣
パロディと違い、諧謔的な精神は希薄で、『徒然草』の続編という位置づけ
室町時代は皆無
近世では、『徒然草』の大流行とともに、「〇〇草」という随筆風の作品が散見されるようになる
『にぎはひ草』(1682)はパロディよりもオマージュ
『徒然草』の書き出し分が「テンプレート」の役割となっていた
『可笑記』(1636)、作者は『徒然草』の講釈師の経験がある?
(3)潜在
一見無関係に見えるが潜在的に『徒然草』の影響を受けている作品
『宝蔵』(1671)、山岡元隣(げんりん)作
筆や紙、鍋や徳利といった身近な道具類の考察、72種の道具
それぞれに発句と狂詩がつく、17世紀文学の白眉
P210
17世紀の文学は、思想的にも文章的にも中世から地続きの部分が大きい
『徒然草』から大きな影響を受けたと考えれる(古典の再発見)
2 漢文への翻訳―「乾き砂子」の故実
近世期の文学史上の人物、漢文の素養がある
漢文は近世文学の骨格を成している
『真字(まな)寂寞草(つれづれぐさ)』(1689)、真字(まな)=漢字
和語/漢語の対比のテキストか?
本格的な漢訳の登場
近世中期の荻生徂徠門下(古文辞学派)による漢訳
朱子学以前の中国古典を学ぶ必要から、「古文辞」に通じる必要があり、実際に詩や文章を作る練習を門人に勧めた
なぜ『徒然草』が漢訳されたのか?
ある程度のまとまりのある文章を短編として切り出しやすかった=翻訳しやすかった
内容そのものが漢籍に影響を受けていた
近世の漢学者にとって、『伊勢物語』・『源氏物語』とは截然と一線を画し、『徒然草』は比較的なじみやすい和文だった
