2022年4月20日水曜日

[積読立読斜読] 『久保田万太郎俳句集』(岩波文庫、2021年)(57)



昭和二十七年、戦災から落ち着いてきたのか、関西での句のせいなのか、

静謐なかにも諧謔のある、味わいのある句が散見。

「祇園”杏花”にて」の前書きのある556は京都弁を活かした秀句。


 ばか、はしら、かき、はまぐりや春の雪

 

仰山(ぎやうさん)に猫ゐやはるわ春灯

 

わらづかのかげにみつけしすみれかな


流寓抄 その九


548 年玉の手拭の染メ匂ひけり


549 春火鉢かじかみし手をかざしけり


550 雪の魔の死の魔とゝともにくるひけり


551 ばか、はしら、かき、はまぐりや春の雪


552 自動車を下りずにまつや春の雪


553 連翹(れんげう)のまぶしき春のうれひかな


554 凩(こがらし)や京の揚屋のはこばしご


555 詠みし句のそれぞれ蝶と化(け)しにけり


556 仰山(ぎやうさん)に猫ゐやはるわ春灯


557 笛の音にこもりし春のうれひかな


558 わらづかのかげにみつけしすみれかな


559 あひともにかちわたらむよ春の水


560 髭黒の大蒋(だいしやう)に花ふぐくかな


連翹(れんぎょう)

レンギョウとは、モクセイ科の落葉低木。中国原産。早春、葉より先に黄色の花を開く。観賞用。イタチグサ。「連翹」の「連」は、枝に実が並んで付いていることを表す。「翹」は、キジが尾羽を広げて高く飛び立つさまを表した漢字で、ここでは茎が高く直立していることを表している。





日本大百科全書(ニッポニカ)「揚屋」の解説

揚屋(あげや)

遊廓(ゆうかく)で遊女を招いて遊興させる店。遊女屋とは別に、遊興の場所のみを提供する店として揚屋が登場するのは近世初期である。遊女屋での遊興に比べて費用は高くても、優雅な待遇を求める需要に応じたものである。したがって、揚屋を利用するのは太夫(たゆう)、格子(こうし)などの高級遊女の客に限られ、中以下の遊女を招く店は茶屋、私娼(ししょう)街での類似店は呼屋(よびや)といって区別した。揚屋のある遊廓でも下級妓(ぎ)は遊女屋に客を揚げた。遊女が揚屋へ往復するときは従者を連れて行列し、これを道中と称した。花魁(おいらん)道中の原型である。江戸の新吉原では、1760年(宝暦10)ごろに揚屋が消滅し、かわりに独特な引手(ひきて)茶屋の制度が生まれた。[原島陽一]


精選版 日本国語大辞典「箱梯子」の解説

はこ‐ばしご【箱梯子】

階段の裏の下部の空間に、側面から利用する、引き出しや戸棚を設けた階段。段と段との間にとりだし口を設けたものもある。はこばし。




春灯(はるともし)季語

しゅんとう【春灯】

俳誌のひとつ。昭和21年(1946)1月、小説家・劇作家・俳人の久保田万太郎の主宰により創刊。久保田の没後は創刊時から編集を担当していた安住敦が主宰を引き継いだ。