桐野夏生さんの新刊を読んだので、同じ棚にあった2021年の作品『砂に埋もれる犬』を読みました。オリジナルは『週刊朝日』に2020年2月14日から2021年2月12日まで1年間にわたって連載されたもの。
現代日本の格差社会の底辺で生きざるを得ない育児放棄をされた少年の目から見た、深刻で悲惨な現状を小説化したものです。
後味は非常に悪く、著者も解答を示していないので、読者としてもどうしていいのかわかりません。まずは現実を真摯に受け止めることからになるのでしょうか。
ネットの読書サイト「好書好日」の紹介インタビュー記事がよく出来ていいたので無断引用します。
https://book.asahi.com/article/14493477
桐野夏生さんが新刊『砂に埋もれる犬』(朝日新聞出版)を出した。虐待を受けた少年の心がゆがんでいく様子を冷徹な筆致で描く。
主人公は12歳の少年、小森優真(ゆうま)。母・亜紀は無職で、交際している男の部屋に優真、4歳の弟とともに居候している。男と近所の遊技施設に入り浸る亜紀は、平気で3日も4日も子どもたちを部屋に残す。マンガ雑誌や衣類のちらかった部屋で、兄弟は優真がコンビニでもらってきた、廃棄されるはずだった弁当をめぐっていがみあう。
優真は母親からの愛情を受けられずに育ち、女性への憧れや甘えを充足させられないまま思春期に入る。そこにミソジニー(女性嫌悪)の芽があるのではないか、と桐野さんは考えた。
「男が女を馬鹿にしたり、ヘイトしたりするのは、もちろん男尊女卑的な環境もあると思いますが、女、それも母親との関係に対する裏切られた思いや、いらだちのようなものが幼少時からあったからではないか、という気がします」
その「仮説」は、書き進めていくうちに導き出されたものだという。
「書くということは、優真と一緒に経験を重ねていくこと。一年かけて書いていくうちに、だんだん優真の屈折が実感できてくる」
劣悪な環境に育った優真の心は、児童相談所に保護され、里子として引き取られた後も、周りの人間と関わるごとに傷ついていく。
たとえば、里親から発せられた「友だちできたかな」の一言。歯磨きや風呂の習慣さえ根付いていない優真は、進学した中学でも人間関係の作り方がわからず、周りになじめない。
「子どもたちのコミュニティーに入れない子に、『友だちができたか?』と聞くのはものすごく残酷なこと。書いていて初めて気づきました」
優真の鬱屈(うっくつ)は、クラスメートの女子生徒へと向けられ、彼女に対する行動は次第にエスカレートしていく。
「つぶれてしまった心はなかなか元に戻らない。すでに、単純に愛情を注げば解決する問題でもなくなっている。どうすれば良いのか。突き放すようですが、私にはわからな
いです」(興野優平)=朝日新聞2021年12月1日掲載
