もし村上春樹の小説が世界中で受け入れられずに、ノルウェイのオスロにある「文学の家」という文化団体が朗読会に招待せず、村上春樹がオスロに一カ月滞在せず、空港で本作の英訳本を手に取らなかったら、日本の読者はこの奇妙だが魅惑的な小説と出会うことができませんでした。
村上春樹とその作品を受け入れた世界の読者に感謝しなければいけません。
作者のダーグ・ソールスターはノルウェイの作家で1941年生まれ。村上春樹がたまたま読んで強く心を引き込まれ翻訳・出版となったそうです。
作品も奇妙ですが、タイトルの『Novel 11, Book 18』もいささか奇妙なタイトルで、作者の11番目の小説、18番目の出版、という意味だそうです。
いちおう主人公はノルウェイの地方都市に住む収入役で、50歳代。不倫の末、中央政府の要職を辞職し、恋人の下に去り、その恋人とも別れ、以下略という、人生を段階的に降りていく男の話で、大団円があっと驚く展開になっていて、まった読めず、痛快でした。
人生に意味はないが、それでも生き抜く必要があるのだ、というテーマをネガティブに捉えて、色調が全体的に暗いのですが、読後はとてつもない諧謔を感じるという不思議な小説です。
いずれにせよ、よい小説との出会いを設定してもらえて、村上春樹さんに感謝。