戦争なんてオモチャじゃないか
岩波文庫版『桜の森の満開の下・白痴』より。
七北数人・解説
p411
「白痴」の伊沢は「戦争の破壊の巨大の愛情が、すべてを裁いてくれるだろう」と破滅願望にも似た、自分を突き放すような心情を吐露していたが、「戦争と一人の女」でも心の基点は同じようである。不感症なのに遊ばずにいられない女との、戦争の間だけという期限付きの性愛。GHQが削除したラストシーンには、「戦争なんてオモチャじゃないか」という底深い比喩がある。戦争と女の肉体を一体化させて、「もっと戦争をしゃぶってやればよかったかな。もっとへとへとになるまで戦争にからみついてやればよかったかな」と書くところ、死と隣合わせのエロスが冷たく凝縮された感がある。
