2023年6月18日日曜日

[積読立読斜読] 『漱石俳句集』(坪内稔典編) 10


 

叩かれて昼の蚊を吐く木魚哉

 


107 搰の火や昨日碓氷を超え申した


108 梁山泊毛脛の多き搰火哉


109 雛殿も語らせ給へ宵の雨


110 陽炎の落ちつきかねて草の上


111 叩かれて昼の蚊を吐く木魚哉


112 明けやすき夜ぢやもの御前時鳥


113 白露や芙蓉したたる音するなり


114 乗りながら馬の糞する野菊哉


115 夕月や野川をわたる人は誰


116 日の入や秋風遠く鳴つて来る


117 曼殊沙華あつけらかんと道の端


118 はらはらとせう事なしに萩の露




107   榾 ─ たき物 に する 木 切れ。


109   119 まで 子規 編『 承 露盤』 に 収載。


 そういえば、漱石は、同じ二十八年の十二月十八日付け、子規宛て書簡にも、

  梁山泊毛脛(けずね)の多き榾火哉


  裏表濡れた衣(きぬ)干す榾火哉


と、二句の榾火に関する句を詠じていた。前の句は、『忠義水滸伝』第二十回で、梁山泊に豪傑たちが集まり、林冲が晁蓋を頭目として立て、十一人の豪傑の席次が定められた場面などの様子を想定して、こう作ったものであろう。他の回にも豪傑たちが集合する場面があるけれど、一応、第二十回にしておく。その場面を想像するに、豪傑たちは、いずれもむくつけき荒武者なので、毛むくじゃらの脛を露わにしているのであるが、そうした彼らが囲炉裏の火を取り巻いて、酒を痛飲しながら談笑している。そうした光景を漱石は形象化し、ここでも榾火が醸し出す親愛感に焦点を当てている。


 子規は『水滸伝』の愛読者であるし、このような男性的でドラマティックな情景が好きなので、点の辛い彼にしては珍しくこの句に〇印を与えている。佳作というほどの評価である。


https://ameblo.jp/bukou2007/entry-12520547571.html


『繊細な美』『しとやかな恋人』

芙蓉は柔らかな花姿と、1日で枯れてしまう儚さから、昔から美しい女性の例えとして使われてきました。このことから、「繊細な美」「しとやかな恋人」という花言葉がつけられました。