[積読立読斜読] 『なぜヒトだけが老いるのか』(小林武彦著、講談社現代新書、2023年)
生物はなぜ死ななけらばならないのかを進化の過程から説明した前作を引き継いで、
生物ではまれな「老後」を持つ人間の人生の意味をカジュアルに考察した啓蒙書。
p3
前作のまとめ
・生物は「変化と選択」を繰り返す「進化のプログラム」によって、今ある姿・形・性質のすべてを獲得した。
・生物は進化によって作られた。
・進化のプログラムを動かす「変化と選択」の「変化」は「多様性」が生まれること、「選択」は「死ぬこと」
。
・死ぬものだけが進化ができて、今存在している。
・死ぬことは「他者を生かす」
・全ての生き物は、偶然、勝手に、利己的に生まれ、死ぬときには、結果として他を利するかたちで、公共的に死んでいく。
p4
本書のテーマ
・集団(社会)の中で進化したヒトは死への恐怖が強く、これは他人を思いやることができる「共感力」によるもの
・ヒトの場合は死の前に「老いの期間(老後)」があり、30~40年と非常に長い。
・老後はヒト以外の生物にはほとんど見られない。
・「老い」は「死」と違い、全ての生物に共通した絶対的なものではない。
本書の問い
「いったいなぜ、ヒトだけが老いるのでしょうか。」
「では、「老い」とはいったい何なのでしょうか。」
結論
人にとって老いは必要なもの。老いを実感しているシニアは社会にとって必須の存在であり、「老い」のおかげで人類の寿命が延び、今の文明社会が築かれた。(筆者の意見)
「ヒト」:生物種としてのホモ・サピエンス
「人」:社会の中で生きる人
p94
哺乳動物の老後期間[図]
未成熟期・生殖可能年齢と老後期間の対比図
老後があるのは「シャチ」「ゴンドウクジラ」「ヒト」のみで、ヒトは特に老後が長い
共通しているのは子育てが単独では難しく、長期にわたる哺乳類に老後がある
「おばあちゃん理論」(保育)「おじいちゃん理論」(長老)
ゴリラと人間の赤ちゃんの違い
体毛につかまって移動できる、寝かせても泣かない(ゴリラ)
p152
何歳からが本当の「高齢者」か
本来は相対的な言い方の「高齢者」
長寿化した現代では75歳以上が適当か(筆者の意見)
p194
『老人と海』のサンチャゴの生き方
「獲得と喪失」「老いの悲哀」(×)
後悔しない前向きな精神と幸福感(筆者の意見)
p197
筆者の提案
①元気なときは本能のおもむくままにやりたいことをやり(公序良俗に反しない限り)
②老いを感じ始めたら、少しづつ中心を自分から周りに広げる
③「シニア」(※良識ある人で年齢には関係ない)になり、無理のない範囲で公共に尽くし
④最後は皆に惜しまれて天寿を全うしてピンピンコロリと死んでいく(いつ死んでもいいように準備する)
p207
老年的超越の心理的特徴
1989年、スウェーデンの社会学者トルンスタム
85歳を超える超高齢者の心理状態の分析
①宇宙的・超越的・非合理的な世界観
(俗っぽいことには興味が薄い)
②感謝
(他者に支えられている認識と感謝の念)
③利他
(自分中心から他者を大切にする姿勢)
④肯定
(肯定的な自己評価やポジティブな感情)
p218
なぜヒトだけが老いるのか。それは死を意識し公共を意識するためです。死はなんのためにあるか。それは進化のためです。
進化は何のためにあるのか。それは私たちも含めた地球上の全ての生物の存在理由なのです。
p162
人の社会は二重構造(シニアと若者の役割分担)
①社会の基盤を支える部分(ベース層)
シニアが重要な役割を担う
②学びと遊びの部分(クリエイティブ層)
若者が活躍する
①から②へ「知識・技術・文化の継承」
<内容紹介>講談社のサイトより
【ベストセラー『生物はなぜ死ぬのか』著者による待望の最新作!】 人間以外の生物は、老いずに死ぬ。実は「老い」はヒト特有のものなのだ。なぜヒトだけが老いるようになったのか? ヒトだけが獲得した「長い老後」には重要な意味があった──。生物学で捉えると、「老い」の常識が覆る! ◆本書の主な内容/産卵直後に死ぬサケ、老いずに死ぬゾウ、死ぬまで子が産めるチンパンジー/ヒトは人生の40%が「老後」/長寿遺伝子の進化/寿命延長に影響した「おばあちゃん仮説」と「おじいちゃん仮説」/「老化するヒト」が選択されて生き延びた理由/ミツバチとシロアリに学ぶ「シニアの役割」/昆虫化するヒト/不老長寿の最新研究/85歳を超えたら到達できる「老年的超越」というご褒美/老化はどうやって引き起こされるのか/生物学者が提言する「最高の老後の迎え方」とは ……ほか 「老いの意味」を知ることは「生きる意味」を知ることだった。
