年末には総合誌等の編集で現時点での日本・世界の現状・課題をコンパクトにまとめた雑誌・新書が刊行されます。『イミダス 現代の視点2021』(日本の「現在地」を俯瞰する、集英社新書、イミダス編集部)、『文春ムック 文藝春秋オピニオン 2021年の論点100』(文藝春秋)等です。いずれも専門家複数による共著ですが、本書は出口治明さん個人版の「日本の論点」です。
オリジナルは2018年に出版元の幻冬舎での「出口塾・自分の頭で考える日本の論点」という連続講義だそうです。「論点」自体は出口さんの選で、論点の巻頭につく解説は幻冬舎の編集者によるものと思われます。解説を踏まえて出口さんの考え方を披露しています。特徴としては結論に至った思考回路を詳しく述べている点です。出版を前提にしたものではなかったのか他の著書と重複が多数ありますが、現時点での日本・世界の論点を「本書を通じて、皆さんが、物事を深く多面的に捉えて、自分の頭で、自分の言葉で考えて答えを出す力を身につけるお役に立てれば、こんなに嬉しいことはありません。」というのが本書の目的だそうなので、出口さんのジャッジを参考にしつつも解説を読んで自分なりの考えをまとめる必要があるようです。
出口さんは現在学長を務めるAPU(立命館アジア太平洋大学)の広告塔を自認されているせいか、本年度の相当数の出版点数です。内容には粗製乱造なものはなく、執筆はおそらくライターに任せているのでしょうが、現代日本を代表する知の巨人としての洞察力は畏敬するものがあり、今後数年にわたって日本の針路として参考になる著書だと思いました。
一般の社会人の当方のような人間にも、テレビやネットの刹那的な意見や、劣化したジャーナリズムの底の浅い論調よりも数段世の中の理解に役に立ちそうです。
出口さんの選んだ22の論点は下記の通り。
01.日本の新型コロナウイルス対応は適切だったか。
02.新型コロナ渦でグローバリズムは衰退するのか。
03.日本人は働き方を変えるべきか。
04.地球温暖化は本当に進んでいるのか。
05.憲法9条は改正すべきか。
06.安楽死は認めるべきか。
07.日本社会のLGBTQへの対応は十分か。
08.ネット言論は規制すべきか。
09.少子化は問題か。
10.日本は移民・難民をもっと受け入れるべきか。
11.日本はこのままアメリカの「核の傘」の下にいていいのか。
12.人間の仕事はAIに奪われるのか。
13.生活保護とベーシックインカム、貧困対策はどちらがいいのか。
14.がんは早期発見・治療すべきか、放置がいいのか。
15.経済成長は必要なのか。
16.自由貿易はよくないのか。
17.投資はしたほうがいいか、貯蓄がいいか。
18.日本の大学教育は世界で通用しないのか。
19.公的年金保険は破綻するのか。
20.財政赤字は解消すべきか。
21.民主主義は優れた制度か。
22.海外留学はしたほうがいいのか。
付録として出口さんが実践している「自分で考えるための10のヒント」も巻末にまとめてありましたので見出しだけ抜き書きします。
①タテ(時間軸・歴史軸)・ヨコ(空間軸・世界軸)でか投げる
②算数、すなわち数字(データ、エビデンス)・ファクト(事実)・ロジック(論理、理屈)で考える
③外付けハードディスクを利用する
④問題を分類する「自分の箱」をいくつか持つ
⑤武器を持った「考える葦」になる
⑥自分の半径1メートル圏内での行動で世界を変えられると知る
⑦「人はみんな違って当たり前」だと考える
⑧人の真贋は言行一致か否かで見極める
⑨好き嫌いや全肯定・全否定で評価しない
⑩常識は徹底的に疑う
※当方はキンドル版で読了しました。
