クイーンの"Brighton Rock" のブライトンです。
もともとパンクロックが好きでイギリスに居ついてしまった格好のブレイディさんですが、地元のパブの会話について行くべく図書館・新聞等でイギリスの政治・経済・歴史を勉強し、いまや著名新聞社特派員を差し置いて第一級のルポを書かれる書き手となりました。
当方はあまりイギリスの現地情報に興味がないので、ブレイディさんの文章構成に唸ることはあっても、一冊じっくり読んだことはありませんでした。
本書はこれまでと立ち位置を変えて、公立の中学校に進んだ息子さんの日常と、母と息子の会話を通して、EU離脱で大揺れに揺れるイギリス国内事情と、時折描写される、これも難問山積の母国日本事情を織り交ぜながら綴られる、英国版『君たちはどう生きるか』です。
優良校に進学できた優等生の「ぼく」が何故、元・底辺中学校に通くことになったのかは本書に譲るとして、本書のもう一人の書き手「ぼく」の立ち位置が絶妙です。タイトルになった『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』が示すように日本人とアイルランド人のダブルとして生まれ、思春期特有の「ブルー」な感情が、母との会話を通じて第一級のルポを生み出しました。タイトルは「ぼく」のノートの端にあったいたずら書きだそうです。
感受性豊かなな「ぼく」から、ブレイディみかこさんの話の聞きだし方が上手なのか、それとも「ぼく」が観察力豊かで、適格な表現ができるのかは不明ですす。自分で考える子供を育てるような授業内容のあるイギリスの公立中学校の環境もあるのでしょう。
それにしても腐っても大英帝国。社会人がまっとうな議論ができ、考えることのできる大人に育つような教育システムはまだまだ健在のようです。ブレイディさんは日本からみれば落ち目のイギリスのことはあまり心配してません。議会制民主主義の長い歴史があるからで、いまさらながらもらいものの民主主義で、かつそのありがたみがわかってない日本の将来のほうが心配になりました。
自分がもし中学生の親ならば、こんなに密度の濃い会話はできないでしょうね。(かつて親だったのですが単身赴任中でほとんど会話してません)。
<著者プロフィール>
1965(昭和40)年福岡生れ。県立修猷館高校卒。音楽好きが高じてアルバイトと渡英を繰り返し、1996(平成8)年から英国ブライトン在住。ロンドンの日系企業で数年間勤務したのち英国で保育士資格を取得、「最底辺保育所」で働きながらライター活動を開始。2017年『子どもたちの階級闘争』で新潮ドキュメント賞を、2019(令和元)年『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』でYahoo!ニュース|本屋大賞2019年ノンフィクション本大賞を受賞。他の著書に『THIS IS JAPAN』『ヨーロッパ・コーリング』『女たちのテロル』などがある。
<内容紹介>
優等生の「ぼく」が通う元・底辺中学は、毎日が事件の連続。人種差別丸出しの美少年、ジェンダーに悩むサッカー小僧。時には貧富の差でギスギスしたり、アイデンティティに悩んだり。世界の縮図のような日常を、思春期真っ只中の息子とパンクな母ちゃんの著者は、ともに考え悩み乗り越えていく。落涙必至の等身大ノンフィクション。
いずれも新潮社のサイトより。
