2019年12月2日月曜日

[積読立読斜読] 『ペンギン・ブックスが選んだ日本の名短編29』(ジェイ・ルービン選、村上春樹序文、2019年新潮社)より 三島由紀夫「憂国」


2日続けて『ペンギン・ブックスが選んだ日本の名短編29』を読んでます。本日は三島由紀夫の「憂国」。(29編とありますがどう数えても28しかありません)。

「憂国」は森鴎外の「興津弥五右衛門の遺書」と同じ「忠実なる戦士」に纏められています(この二編のみ)。いずれも切腹を扱った小説です。

「憂国」は1961年の作品。二・二六事件に際し叛乱軍の青年将校から蹶起に誘われず、逆にかつての仲間を討伐しなければならない立場になった新婚の中尉夫婦の自決を克明に描いています。

中尉は享年三十、婦人は二十三で、結婚後半年で自決という設定です。

三島由紀夫の絢爛たる美文で、新婚夫婦の性と、自決の苦悩が混然一体となった喜びに昇華していくまで後押しは、中尉の遺書に一句のみ書かれていた「皇軍万歳」という意識なのでしょう。ここまでの純化を眼前に出されると、政党名に「維新」と軽々しく使ってはいけないのじゃないかと改めて感じました。

村上春樹さんは序文でこの作品が「この作品の描く世界の美しさに惹かれる読者もおられるだろうし、ただ嫌悪感を催すしかないという読者もおられるだろう。しかしその是非はともかく、ここに描かれたひとつの想念の徹底した純化ぶりに、文学として評価すべきものがあることは認めないわけにはいかないはずだ。」として作品は認めつつも、執筆から9年後の三島由紀夫自身の割腹自殺については「ひとつの想念を文学として純化させることと、想念を行為として純化させることのあいだには、きわめて大きな違いがある」と否定的です。



追記:芥川龍之介が2編あり、たしかに29編あります。