10月5日からNHKラジオの番組「英語で読む村上春樹」の新しい購読作品「トニー滝谷」が始まりました。
この番組は2013年からの放送で半年で村上春樹の英訳された短編小説を精読するという企画です。現在までに「象の消滅」「かえるくん、東京を救う」「踊る小人」が取り上げられています。
前三作は寓話的な作品で、日本語から英語に翻訳してもあまり違和感がなかったかも知れませんが、「トニー滝谷」は結構リアリズムであり、純日本人でありながら日系二世のような命名を受けた主人公の葛藤も主題のひとつですので、翻訳とのギャップが興味深いところです。
明治大学教授の齋藤孝さんが近著『読書の全技術』(中経出版)で「精読の最もたるものが翻訳だ。クライマックスは原文を声に出して読もう」と翻訳精読を勧められています。同感です。
このプログラムではオリジナルの翻訳のジェイ・ルービンさんの英文と同時に、講師役の新元良一さんの英文も比較対象できるという企画になっています。いまや世界作家となった村上春樹を母国語で読める幸せを、その翻訳も味わいながら、改めて感謝です。
「トニー滝谷」は1990年にオリジナルが『文藝春秋』に発表されました。当方の好きな短編の一つで、今後の放送が楽しみです。