2024年5月18日土曜日

[積読立読斜読] 『漱石俳句集』(坪内捻典編、岩波文庫)明治二十九年 245—254

 

252 累々と徳孤ならずの蜜柑哉





 明治二十九年


245 初冬や向上の一路まだ開かず


246 凩や海に夕日を吹き落す


247 謡ふべきほどは時雨つ羅生門


248 水仙や主人唐めく秦の姓


249 夕陽逐(お)ふ乗合馬車の寒かな


250 貧にして住持去るなり石蕗(つわ)の花


251 しぐれ候ほどに宿につきて候


252 累々と徳孤ならずの蜜柑哉


253 日あたりや熟柿(じゅくし)の如き心地あり


254 紡績の笛が鳴るなり冬の雨


246~257まで句稿(その二十一)にある句。

住持—住職。

徳孤ならず—『論語』の「徳は孤ならず必ず隣有り」。