大文豪には失礼なのですが、漱石の俳句は技巧を凝らした唸るような句はなく、
上手とはいいがたいと思うのですが、明治二十九年のここらあたりからだんだん上達した感じがしています。
233 祭文や小春治兵衛に暮るる秋
234 行秋を踏張てゐる仁王哉
[積読立読斜読] 『漱石俳句集』(坪内捻典編、岩波文庫)明治二十九年 226—235
226 枕辺や星別れんとする晨(あした)
227 名月や丸きは僧の影法師
228 名月や浪速に住んで橋多し
229 蘭の香や聖教帖を習はんか
230 長けれど何の糸瓜とさがりけり
231 名月や十三円の家に住む
232 月東君は今頃寐てゐるか
233 祭文や小春治兵衛に暮るる秋
234 行秋を踏張てゐる仁王哉
235 古白とは秋につけたる名なるべし
226「内君の病を看護して」と前書。晨—夜明け。
聖教帖—王義之の筆蹟による「聖教序」の碑の拓本。習字の手本。
231、232 9月25日の子規への手紙に記された句。
233,234句稿(その十八)にある句。
233「小春治兵衛」文楽の『心中天網島』か?
235「憶古白」と前書。秋の神を白帝と言い、白は秋の色。
