明治二十七年
25 何となう死に来た世の惜まるる
26 矢響のただ聞ゆなり梅の中
27 弦音にほたりと落る椿かな
28 春雨や柳の下を濡れて行く
29 烏帽子着て渡る禰宜あり春の川
30 風に乗つて軽くのし行く燕かな
31 菜の花の中に小川のうねりかな
明治二十八年
32 柳ちる紺屋の門の小川かな
33 見上ぐれば城屹として秋の空
34 秋の山南を向いて寺二つ
35 山四方中を十里の稲筵(いなむしろ)
36 一里行けば一里吹くなり稲の風
25は漱石が風邪をこじらせ憂鬱に。
26弓道に参加。
29蕪村に「烏帽子着て誰やらわたる春の水」。
30「のし行く」遠くまで行く。
32から36は子規へ送った句稿。愚陀仏の別号あり。
