2025年12月5日金曜日

[惹句どんどん] 小川公代(上智大学教授)

 

一人の「個」あるいは一つの「国家」が
ときに逡巡のない姿勢で”正しさ”を語ることには、
決定的な弱点があるのではないか
ということに気づく。


 



『ケアの物語』(岩波新書)「はじめに」より
キャロル・ギリガンが提唱した<ケアの倫理>とは、事故と他者の関係性のあいだで
揺れ動きながら葛藤し、容易には答えを出さずにいる姿勢を表す。
あるいは答えがすっきり出せずにもがいているような状態を指すだろう。

この関係性を中心に倫理を捉えようとるアプローチから
<正義の倫理>というものを眺めてみると、一人の「個」あるいは一つの「国家」がときに逡巡のない姿勢で”正しさ”を語ることには、決定的な弱点があるのではないかということに気づく。

それは”正しさ”を声に上げて語ることのできない人や国が確固として存在しているにもかかわらず、強者が必ずしも弱い立場にいる人たちに手を差しだせているわけではないからだ。


<小川公代プロフィール>
1972年、和歌山県生まれ。上智大学外国語学部教授(ロマン主義文学、医学史)。英国ケンブリッジ大学卒(政治社会学専攻)、グラスゴー大学博士号取得(英文学専攻)。著書に『ケアの物語 フランケンシュタインからはじめる』(岩波書店)、『ケアの倫理とエンパワメント』『ケアする惑星』(講談社)、『世界文学をケアで読み解く』(朝日新聞出版)、『ゴシックと身体 想像力と解放の英文学』(松柏社)、『翔ぶ女たち』(講談社)など