生きている事と死んでしまっている事と、
それは両極ではなかった。
そして死ななかった自分は今こうして歩いている。そう思った。自分はそれに対し、感謝しなかれば済まぬような気もした。しかし実際喜びの感じは湧き上がって来なかった。生きている事と死んでしまっている事と、それは両極ではなかった。それほどに差はないような気がした。
p117
岩波文庫『小僧の神様 他十篇』(志賀直哉著)「城崎にて」より
正月に配偶者と城崎温泉に行くので
「城崎にて」を含む志賀直哉の岩波文庫版の短編集を再読中。
志賀直哉は1883年(明治16年)2月生まれ。
「城崎にて」の執筆は1917年(大正6年)で34歳の時点。
(実際の城崎温泉での湯治は1913年)。
肖像写真が晩年のものが有名なので老成したイメージがありますが、
キャリアのかなり早い時点での作品です。
この死生観はお見事。
