2025年12月21日日曜日

[惹句どんどん] 志賀直哉

 

生きている事と死んでしまっている事と、
それは両極ではなかった。

 



そして死ななかった自分は今こうして歩いている。そう思った。自分はそれに対し、感謝しなかれば済まぬような気もした。しかし実際喜びの感じは湧き上がって来なかった。生きている事と死んでしまっている事と、それは両極ではなかった。それほどに差はないような気がした。


p117

岩波文庫『小僧の神様 他十篇』(志賀直哉著)「城崎にて」より


正月に配偶者と城崎温泉に行くので

「城崎にて」を含む志賀直哉の岩波文庫版の短編集を再読中。


志賀直哉は1883年(明治16年)2月生まれ。

「城崎にて」の執筆は1917年(大正6年)で34歳の時点。

(実際の城崎温泉での湯治は1913年)。

肖像写真が晩年のものが有名なので老成したイメージがありますが、

キャリアのかなり早い時点での作品です。


この死生観はお見事。