484 墨の香や奈良の都の古梅園
[積読立読斜読] 『漱石俳句集』(坪内捻典編、岩波文庫)明治三十二年 476—485
476 駒犬の怒つてゐるや梅の花
477 封切れば月ヶ瀬の梅二三片
478 ものいはず童子遠くの梅を指す
479 寒徹骨(かんてつこつ)梅を娶ると夢みけり
480 黄昏の梅に立ちけり絵師の妻
481 瑠璃色の空を控へて岡の梅
482 梅の花琴を抱いてあちこちす
483 さらさらと衣を鳴らして梅見哉
484 墨の香や奈良の都の古梅園
485 灯もつけず雨戸も引かず梅の花
477 月が瀬—奈良県の梅の名所。
479 寒徹骨—寒さが骨までつきとおること。
484 古梅園—奈良の墨の老舗。そこで作られる墨の名でもある。
※大脇注、スティック・タイプの固形の墨。会社は現在も営業。

