画像は朝日新聞のサイトからお借りしました
8月15日(月曜日・盆休み)終戦の日。
毎年数多くの戦争関連の書籍が出版されます。本書は学術会議任命拒否問題で逆に存在感を示した1930年代を中心とした日本近代史が専門の東京大学大学院教授の加藤陽子さんと、作家の奥泉光さんによる対談集。一般読書人向けの新書として頁数が限られている中、アジア太平洋戦争の総括を試みた野心作です。
戦争関連の本というと国民の悲惨な体験か、戦史家による戦績の分析が主なようですが、本書は国民の主体である「中間層」と、明治維新による国民国家生成の上で重要な二つの主軸「議会制民主主義(参政権)」「徴兵制」を基に、国家によるプロパガンダの「物語性」が「中間層」に与えた影響についての新鮮な解釈がありました。
また戦史面では「顕教」「密教」という言葉で、表向きの作戦行動の裏にある、真の作戦行動をあぶりだし、一見不可解に見える帝国日本の政治・軍事行動が明らかにされていきます。日独伊三国軍事同盟の解釈には眼から鱗でした。
依然として日本は占領軍・アメリカの属国であり、「戦後」は終わっていません。有識者による粘り強い「アジア・太平洋戦争」の総括を望みます。
以下は出版社の河出書房新社のサイトより
https://www.kawade.co.jp/sp/isbn/9784309631509/
<内容紹介>
今こそ、「日本人の戦争」を問い直す。日本はなぜ、あの戦争を始め
たのか? なぜ止められなかったのか?
戦争を知り尽くした小説家と歴史家が、
日本近代の画期をなした言葉や史料を読み解き、
それぞれが必読と推す文芸作品や手記などにも触れつつ、徹底考察。
「わかりやすい物語」に抗して交わされ続ける対話。
「ポツダム宣言」「終戦の詔書」を読む解説コラムも収録。
<目次>
はじめに(奥泉光)
Ⅰ 太平洋戦争とは何かを考えるために
戦争と物語/国民統合の方法としての軍隊/お天道様と公道/民衆にとって天皇とは?/自制を失う「帝国」/主権線・利益線論と物語としての日露戦争/不戦条約と軍隊像の転換/リットン報告書を拒絶、そして満州事変へ ……
Ⅱ なぜ始めたのか、なぜ止められなかったのか
なぜ満州か/国際連盟脱退と各国の思惑/感情に訴える国民向けの宣伝/陸海軍共通の仮想敵・アメリカ/南進論と三国同盟の要点/変わりゆく「中立」/「もやもや」が消えてゆく/対米開戦の裏側/日本の勝算?/日本的「空気」という謎 ……
【解説コラム】「ポツダム宣言」を読む/「終戦の詔書」を読む
Ⅲ 太平洋戦争を「読む」
戦争を支える気分――清沢洌『暗黒日記』/物語を批判する小説――田中小実昌『ポロポロ』/個人と国家の媒体なき対峙――山田風太郎『戦中派不戦日記』/現代日本のこと?――山本七平『一下級将校の見た帝国陸軍』 ……
おわりに(加藤陽子)
<著者プロフィール>
奥泉 光(オクイズミ ヒカル)
1956年山形県生まれ。1986年に『地の鳥 天の魚群』でデビュー。1993年『ノヴァーリスの引用』で野間文芸新人賞、1994年『石の来歴』で芥川賞、2009年『神器』で野間文芸賞を受賞。
加藤 陽子(カトウヨウコ)
1960年、埼玉県生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科教授。専攻は日本近現代史。『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』『戦争まで』『戦争の日本近現代史』など著書多数。
<体裁>
新書 新書 / 288ページ
ISBN:978-4-309-63150-9 / Cコード:0221
発売日:2022.06.21
定価:968円(本体880円)

