2021年新書大賞第14位。
著者は1974年生まれ。法政大学人間環境学部教授。専門は「歴史地理学」。「歴史」は文献探索が主なのでしょうが、「地理学」にはフィールドワークも重要らしいです。過去の研究も対象が「結城紬」「胃袋」「ポテトチップス」と多岐に渡り今回が「糞尿」です。歴史研究からこぼれ落ちている日常を丹念に掬って、よくぞこんな資料まで見つけたという驚愕の新書になってます。編集者の慧眼恐るべし。
<著者紹介>
<この本の内容>
私たちの身近な存在でありながら、流されてしまえば忘れられてしまうウンコ。しかし、お尻の拭き方、始末の仕方も世界では様々な方法があったりするし、歴史的にはそれが重宝される時代もあったのだ。さらに、処理の対象とされるがその処理も一筋縄ではいかなかった。ウンコの視点から環境、経済、世界を見渡せば、新たな一面が見えてくる。
<この本の目次>
第1章 ウンコとは何か
第2章 世界がウンコに求めているもの―一番身近なSDGs
第3章 宝物としてのウンコ―近世日本の下肥
第4章 せめぎあうウンコの利用と処理―近代における「物質循環」の再編
第5章 都市でウンコが「汚物」になる―産業革命と大量排泄の時代
第6章 消失するウンコの価値―地域固有の清掃行政と戦後下水道物語
第7章 落し紙以前・トイレットペーパー以後―お尻の拭き方と経済成長
第8章 ウンコが教えてくれたこと―世界の分岐点についてのダイアローグ
<感想のようなもの>
副題が「人糞地理学ことはじめ」とあるように「人糞」と人との関係を歴史軸・地理軸から考察したのが本書です。
きっかけは愛知県の「結城紬」研究対象の工場の保管資料からかつて人糞が農村との間で肥料として有価で取引されていたという事実からはじまったようです。
江戸の人糞リサイクル社会、原武史さんの著書にある西武新宿線の「黄金列車」、名著『くう・ねる・のぐそ』(伊沢正名著)などの先行研究が漏れてますが、海外の事例研究や、トイレットペーパーの歴史、東西比較、神話・民話からの引用など、目配りが広範で、新書形態としてはよいと思いました。
人糞を肥料に転換する技術は日本独特のものだそうで、アフリカ諸国へトイレと一緒に技術供与できる感じがします。
人糞を直視することは生きることの素晴らしさを再認識させてくれるよい機会ですね。
P193
「しかし、その歴史を振り返ると、ウンコは中世には「畏怖」され、「信仰」され、近世・近代には「重宝」され、「売買」され、「利用」され、近代・現代には「汚物」と名づけられて「処理」され、「嫌悪」され、その結果「排除」され、そして「忘却」されつつ、今日に至る。」
<資料編>


































