[積読立読斜読] 『(株)貧困大国アメリカ』(堤未果著、岩波新書、2013年)
古書店でみかけて、前から読みたかったので購入、読了しました。
中央公論が主催する新書大賞2014年の第3位です。
堤未果さんの岩波新書のアメリカ・レポートは3冊目。すでに世評が高いので書籍紹介は省略。
1960年代、「パパはなんでも知っている」「うちのママは世界一」の豊かアメリカ中産階級はすでになく、上位1%の富裕層に国富が集中しています。前2冊はアメリカ国内事例、今回はアメリカ発のグローバリゼーションについてのレポートです。
企業化する農業、寡占化する食品業界、破綻する地方自治体、などの事例が日本の新聞がフォローしていない所までリポートしてます。
上位1%に富みが集中(99%は貧困化)という流れはなにもアメリカだけでなく、世界的な潮流です。いずれ日本もそうなる可能性が高いです(すでに兆しはあり)。
P273
「いま世界で進行している出来事は、単なる新自由主義や社会主義を超えた、ポスト資本主義の新しい枠組み、「コーポラティズム」(政治と企業の癒着主義)にほかならない。グローバリゼーションと技術革命によって、世界中の企業は国境を超えて拡大するようになった。価格競争のなかで効率化が進み、株主・経営者・仕入れ先・生産者・販売先・労働力・特許・消費者・税金対策用本社機能にいたるまで、あらゆるものが多国籍化されてゆく。流動化した雇用が途上国の人件費を上げ、先進国の賃金は下降して南北格差が縮小。その結果、無国籍化した顔のない「1%」とその他「99%」という二極化が、いま世界に広がっているのだ。」
P276
「「1%」にとって、国家は市場の1つにすぎず、国単位で対抗できないという事実に気づかなければ(中略)「99%」は簡単に分断されてしまう。」
P277
「本当に価値あるもの、守るべきものとは何だろう。国とは何か。「1%」に奪われようとしている、主権・人権・自由・民主主義・三権分立、決して数字で測れない価値について。市場の中で使い捨てにされる「モノ」ではなく、たった一人のかけがえのない個人として、これらの原点を問われた時、私たちは自らの意志で、どんな未来を描くのか。」
全世界の「99%」諸君、団結せよ!!
ほとんどのレポートは断片的ながら予備知識がありましたが、完全民営化の都市がすでにアメリカで誕生していたという事実には驚愕。
ハリケーン・カトリーナで大きな水害に見舞われたジョージア州。水没した地域住民のほとんどがアフリカ系アメリカ人の低所得層だったことから、アトランタ近郊の富裕層に不満がたまり(自分の税金を救済に回されるため)。
住民投票の上で得たベストの解決策が、自分たちだけの自治体を作って独立すること。大手建設会社が2700万ドルで市の運営を請け負う提案を行ない、契約が成立しました。
正規職員は極力おさえ、契約社員を雇う。もちろん、組合は存在しない。被災地に関心が集まる中、2005年12月、人口10万人の「完全民間経営自治体サンディ・スプリングス」が誕生したのだとか。
<サンディ・スプリングスの概要>
・雇われ市長1人、議員7人、市職員7人。
・警察と消防以外のサービスはすべて民間委託。
・24時間、無休のホットライン。
・住民は平均年収17万ドル(約1700万円)以上の富裕層と、税金対策の大企業。
この動きは周辺にも広がり、新しく5市が後に続き、独立特区を形成。もちろん、富裕層が抜けるのですから、その地域の公立学校や病院、福祉などは成り立たなくなるでしょう。それでも世界からも関心が高いようで、中国やサウジアラビア、インド、ウクライナなどから視察団が訪れているそうです。
P203
「サンディ・スプリングスが象徴するものは、株主至上主義が拡大する市場社会における、商品化した自治体の姿に他ならない。そこで重視されるのは効率とコストパフォーマンスによる質の高いサービスだ。そこにはもはや「公共」という概念は、存在しない。」
うちの近所がこうならないように願います。
