武士は鉄、公家は金
中国の古典に、「馬上天下を得るとも、馬上で天下を治むるを得ず」という言葉があります。軍事力で天下を取れても、力だけでは天下を治めることはできない。これは駿河時代の家康にふさわしい言葉でしょう。
弱者が強者になった時こそ、暴力的な強さ以外の価値や仕掛けへの接近が必要になります。天皇の権威を組み込むことなども、この段階で家康がとった戦略です。武士は鉄に似ています。強くて、物が切れます。釘にも刀にもなります。しかし、鉄が鉄のままでは、誰も有難がりません。一方、金はフニャフニャで、鉄のように実用の役には立ちません。しかし、金は希少です。皆が美しい貴いと憧れます。教養のある天皇や公家は金のようなものです。鉄の武士はメッキして金の力を借りるのが、最強になれる秘訣です。家康はそれを看破していました。弱者・家康がだとりついた最後の戦略は「文化」の重視でした。
『徳川家康 弱者の戦略』(文春新書、2023年)p187より。
