帰ろふと泣かずに笑へ時鳥
岩波文庫版の『久保田万太郎俳句集』の投稿が終わったので、次は同じく岩波文庫版の『漱石俳句集』。
漱石の残した俳句は約2600句で、文庫版ではそのうち848句を坪内稔典さんが編集したもの。
漱石の句は、あまり難しい俳句独特の用語は使わず、どことなく諧謔を秘めているところが良いです。
明治二十二年
1 帰ろふと泣かずに笑へ時鳥
2 聞かふとて誰も待たぬに時鳥
明治二十三年
3 寐てくらす人もありけり夢の世に
4 東風吹くや山一ぱいの雲の影
5 螢狩われを小川に落しけり
6 世をすてて太古に似たり市の内
7 雀来て障子にうごく花の影
8 わが恋は闇夜に似たる月夜かな
9 柿の葉や一つ一つに月の影
10 朝貌(あさがお)や咲たばかりの命かな
11 細眉を落す間もなくこの世をば
12 人生を廿五年に縮めけり
1と2は喀血した正岡子規を見舞った際の手紙。時鳥(不如帰)は子規。
3は自分の眼病で病床から。
5~22までは正岡子規宛の手紙に記された句。「小子俳道発心につき草々の御教訓情人の玉章よりも嬉しく熟読仕候」とある。
10から22までは死去した兄の妻を悼む句。
